【評伝】三遊亭円丈さん 奇想天外な「新作の鬼」 作った落語は300以上

2021年12月6日 06時00分
在りし日の三遊亭円丈さん=2014年7月

在りし日の三遊亭円丈さん=2014年7月

 「古典をやるなら新作から入らないと。真打ちになって、思考回路が出来上がってからでは遅い。落語志望者は前座のうちから新作を作るべし」が持論で、作った落語は300以上。「新作の鬼」と呼ばれた三遊亭円丈さんの高座は、還暦を過ぎてもパワフルだった。黒ぶち眼鏡に陣羽織という独特のスタイルで奇想天外なはなしに命を吹き込んだ。
 19歳で昭和の名人、6代目三遊亭円生(1900~79年)に入門。若いころは師匠譲りの古典落語に励んだが、赤塚不二夫、東海林さだおのギャグ漫画に刺激を受け、師匠亡き後は新作にかじを切った。
 東京・渋谷の小劇場で、78年から86年まで「実験落語」を主宰してSF小説のような世界観の新作落語を生みだし、多くのファンを獲得。新作派で活躍する現代の人気者、春風亭昇太や柳家喬太郎、直弟子の三遊亭白鳥らに多大な影響を与えた。新作をつくる柔軟な発想が古典にも生きるとして、ゲームやパソコンのプログラミングなどから創作力を磨いた。
 一方で、86年に出版した著書「御乱心 落語協会分裂と、円生とその弟子たち」で、兄弟子の5代目三遊亭円楽を批判して物議をかもした。7代目円生の襲名問題では、直弟子として名乗りを上げたが、70歳を前に「40、50代の若手が継いだ方がいい」と漏らしたこともあった。7代目は誰も継いでいない。
 多趣味で、同好会「日本参道狛犬こまいぬ研究会」を自ら設立して長く会長を務め、全国の神社約4000社を巡った経験を基に参道狛犬研究家としても知られた。石の犬だけではなく、陣羽織に愛犬の刺しゅうを施すほどの愛犬家だった。強烈な個性を発揮しながらも、「玄関は顔だから」と毎朝、弟子が稽古に来る前に玄関の掃除を怠らない気配りの人でもあった。(神野栄子)

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