園児のストレスや痛み、生体認証リストバンドで可視化 千葉市の保育施設で実証実験

2021年12月6日 07時08分

ハイフライヤーズが実証実験を進める生体認証機能を備えたリストバンド。裏面(右)の中央にセンサーが取り付けられている

 千葉市の保育施設運営会社が、生体認証機能を持つリストバンドで、園児の状況を可視化するシステムの実証実験を進めている。心拍数や転倒状況などを常時確認できるのが特徴。担当者は「保育士の感覚、経験だけに頼らないことで、ヒューマンエラーのリスクを軽減したい」と意義を強調する一方、保育制度に詳しい専門家からは「究極の個人情報」として慎重な取り扱いを求める声が上がる。(山口登史)
 実証実験を進めているのは、千葉市や成田市で保育施設十三カ所を運営する会社「ハイフライヤーズ」(千葉市中央区)。リストバンドは園児の脈拍やストレス値などのデータと、転倒した回数を常時計測し、近距離無線通信「ブルートゥース」を通じて、クラウドシステムに保存される。
 保育施設内には両親や所属する保育士の同意を得た上で、監視カメラを設置している。園児が痛みなどを感じれば数値に変化が表れるため、データと映像を照らし合わせることで、要因が特定しやすくなることが期待される。
 導入の検討を始めたきっかけは七月、福岡県中間市で送迎バスに取り残された園児が熱中症で死亡した事件だ。同社の保育施設内には監視カメラのほか、ドアの開扉の際にアラームを鳴らすなど、事故リスクを軽減する取り組みを進めてきたが、日向美奈子統括園長は「どれだけ気を付けてもミスは生まれるし、人の力だけでは限界がある」と話す。
 実証実験は千葉市内の二園で十月十八日から十一月十二日に行われ、同月三十日に報告会が開かれた。
 実証実験では園児各二人ずつが保育中にリストバンドを装着した。ある男児は十月二十日夕、ストレス値が急上昇。カメラの映像には座って遊んでいたところを別の男児に押し倒される様子が写っていた。ある女児は十一月九日昼すぎ、心拍の数値が急上昇。映像には別の園児が嫌なことをされる様子を目撃する姿が記録されていた。出席者からは「こうしたデータと保育士のノウハウを組み合わせれば、さらに良い保育の提供につながる」などの意見が出ていた。
 今後は数値のアラーム機能の追加など改良を重ねた上で、保護者の同意が得られ次第、早ければ来春にも本格導入する方針。
 保護者の反応はおおむね良好だ。五歳の男児と一歳の女児が利用している千葉市内の女性会社員(35)は「人の目だけでなく機械にも頼って子どもを守ってくれるので安心できる」と話す。五歳の女児が通う千葉市の女性会社員(31)は「保育士の目に見えない場所もある。負担が少しでも軽減されれば、子どもも安心して預けられる」と期待を寄せる。
 保育制度に詳しい関西福祉大の秋川陽一教授は「万が一の事態を気にする親の期待に応えようとする気持ちは分かるが、採取するデータは究極の個人情報でもあり、きちんと手続きを踏むことを忘れないでほしい」と話した。

実証実験の成果を報告する担当者(画像の一部を修正しています)=千葉市中央区で

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