コロナ禍からの回復を急ぐタイ、失業や収入減で取り残される貧困層も ボランティアら食料や生活物資を支援

2021年12月6日 12時00分

バンコク旧市街で11月、生活が苦しい人たちに、在タイ日本人で手分けして手作りした親子丼や支援物資を配る吉原さん(左から2人目)

 新型コロナウイルス禍からの回復を急ぐタイでは、11月から行動制限を大幅に緩和し、旅行者などの段階的な受け入れも再開した。街のにぎわいは戻りつつある一方、社会経済が停滞した影響は深刻で、失業や収入減から抜け出せず、取り残される人たちは多い。現地の日本人も手作り「親子丼」を配るなど、ボランティアらが食料や生活物資の支援を継続させている。(バンコク・岩崎健太朗、写真も)

◆配給品に長い行列

 ショッピングモールや高級レストランが立ち並ぶ都心部から離れたバンコク旧市街。夕刻、配給品を積んだバンが到着すると、道端に寝転んでいた初老の男性が起き上がり、どこからともなく幼子の手を引いた女性が駆け寄ってきた。瞬く間に長い行列ができ、200食以上用意した親子丼をはじめ、インスタントラーメンや缶詰、飲料、菓子類が15分でなくなった。
 「生活を切り詰めているのでありがたい」。スーパー警備員だったバルンさん(44)は今年初め、勤務先の閉店のあおりで失業。月数回は臨時の仕事が回ってくるが日給300バーツ(1000円)ほどで、妻と10歳の子どもを養えない。バスで1時間かけ毎日この場所にやって来ては、1日中過ごす。手に入れた物資を売り、生活の足しにすることもある。
 政府の試算では、18歳以上で年収10万バーツ(35万円)に満たない生活困窮層は、今年から来年初めにかけて100万〜200万人増加し、1500万人前後に達する。18歳以上の3割近くを占め、世界有数とされる貧富の格差拡大にコロナ禍が拍車を掛けた。
 食費や交通費、光熱費など生活保護の拡充や、現金支給による支援策が再三打ち出されているが、行列に並んでいたジョイスさん(38)は「働き口がほしい」と嘆いた。清掃の仕事先が休業したまま、高齢の母親と5歳と乳児の子どもを抱え、新たな職を見つけるのが難しい。

バンコク旧市街では11月、コロナ禍以前に比べ、夜間、路上で寝泊まりする人たちが目立つようになった

◆邦人も親子丼で支援

 国内の民間有志や外国の慈善団体による支援活動は昨春から続くが、関係者は「医療のようには問題が収束していかない」。バンコクで会社を経営する吉原えりかさん(36)は、たまたま通り掛かった旧市街に路上生活者が目立つようになったと感じ、支援を思い立った。

在タイ日本人有志が手作りしている親子丼=吉原さん提供

 ソーシャルメディアを通じて呼び掛けると、日本人40人ほどが賛同。8月から月2回、「手軽に作れる日本の味」として親子丼を手分けして作り、寄付された生活物資とともに届けている。

在タイ日本人有志が手作りしている親子丼=吉原さん提供

 吉原さんは言う。「海外で暮らしていると、困ったときに当たり前のように手を差し伸べてくれる人が多く、助けられてきた。時間が過ぎて忘れ去られないように、少しでも、できることを続けていきたい」

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