ワクチン前倒し、でもGoTo再開に意欲… コロナ対応で定まらぬ軸足 岸田首相の所信表明演説

2021年12月7日 06時00分
 岸田文雄首相は6日の所信表明演説で、新型コロナウイルス対応を巡る万全の備えを力説した。水際対策の徹底や3回目のワクチン接種時期の前倒し、事業者や家計への大規模な財政支援などを挙げ「後手」批判を浴びた安倍・菅政権の二の舞いは演じないという決意がにじんだ。一方、人出が増加して感染拡大につながりかねない消費喚起策「Go Toキャンペーン」再開に意欲を示すなど、軸足が定まらない印象も与えた。(山口哲人、柚木まり)

◆大判振る舞いを正当化

 「屋根を修理するなら日が照っているうちに限る」
 首相が演説で引用したのは、ケネディ米大統領が1962年の一般教書演説で語った一節だった。感染状況が落ち着いている今こそ、病床確保や経済の下支えなど「次の感染拡大に対する備えを進め、景気回復に持っていくという気持ち」(官邸幹部)を込めたという。これまでよりも事実上、強制力が強い措置を講じたり、経済対策で大盤振る舞いしたりすることを正当化する狙いも透ける。
 「ブレーキ」の代表格は、新たな変異株「オミクロン株」を踏まえた外国人の新規入国停止だ。
 世界保健機関(WHO)から「疫学的に原則が理解困難だ」と非難されたが、首相は「大事なのは最悪の事態を想定することだ」と主張して理解を求めた。中国の習近平国家主席の訪日延期が決まるまで、中国全土からの入国拒否を決断しなかった安倍政権や、ビジネス関係者の入国規制緩和に踏み切った菅政権がいずれも世論の支持離れを招いたことを教訓に「細心かつ慎重な対応」を訴えた。

◆乏しい景気対策の特効薬

 対照的に「アクセル」といえるのが「消費喚起策の準備を進める」と言及した「Go To」だ。菅政権は昨冬、専門家の懸念に耳を貸さず観光支援の「トラベル」事業などを続け、全国的な感染拡大を招いたと批判された。首相は「感染が再拡大した場合には機動的に対応する」と延期や中断に含みを持たせたが、具体的な基準を示していないのはこれまでと同じだ。
 経済再生の取り組みは、持論の「新しい資本主義」実現に向けた賃上げや成長戦略など、中長期的なテーマが多い。足元の景気回復の特効薬は乏しく「Go To」にも手を出さざるを得なかったのが実情だ。

◆供給量、打ち手確保、交差接種…課題山積

 演説の目玉として打ち出したのがワクチン接種の前倒しだが、実務を担う自治体が手放しで歓迎しているわけではない。供給量や打ち手の確保という課題が残る中、「見切り発車」で表明されたからだ。
 国民側の理解も課題になる。首相は前倒しにあたってモデルナ製の活用を訴えたが、自治体は1、2回目で主にファイザー製を使っており、実行に移せばメーカーが異なる「交差接種」になる。
 モデルナ製を巡っては副反応の重さが報じられたこともあり、国民には不安感もあるとされる。全国知事会の平井伸治会長(鳥取県知事)は3日、後藤茂之厚生労働相と面会した際に「現場ではモデルナ製に対する反発の声がある。交差接種を積極的に説明し、早く打った方が良いことを示してほしい」と要請した。

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