早期発見難しい、卵巣がん サイン逃さず受診を 確立した検査方法なく

2021年12月7日 10時14分
 婦人科系がんの一つで、年間一万三千人がかかる卵巣がん。初期は自覚症状がほとんどなく、進行した状態で発見されるケースが多いため、「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれる。おなかが張る、しこりがあるなどは卵巣がんを疑うサインだ。早期の婦人科受診が欠かせない。 (河野紀子)
 「数カ月前から下腹部にしこりがあったのに」。二〇一八年十月、三十六歳の時にステージ1の卵巣がんと診断された吉田ゆりさん(40)=神奈川県厚木市=は振り返る。
 発覚は偶然。吉田さんのおなかに、当時一歳の長男がふざけて頭をぶつけたときのことだ。激痛が走ってすぐ病院へ。腹部のコンピューター断層撮影(CT)と磁気共鳴画像装置(MRI)検査の結果、通常二、三センチの右側の卵巣が大きく腫れ、根元からねじれていた。「卵巣茎捻転」だ。
 画像から腫れの原因となっている約九センチの腫瘍は、悪性の可能性が高かったため、四日後には左右二つの卵巣と子宮を摘出。手術中に細胞を採って調べたところ、後にがんが確定した。以降、経過観察を続けている。今から思うと下腹部の膨らみや頻尿なども自覚していたが「産後だから」と思っていた。
 卵巣は、女性ホルモンの分泌や排卵を担う臓器。日本婦人科腫瘍専門医で大阪医科薬科大産婦人科学教室講師の藤原聡枝(さとえ)さん(43)によると、卵巣がんには確立された検査方法がない。国が推奨する検査で早期発見が可能な乳がんや子宮頸(けい)がんとの違いは、そこだ。
 卵巣は骨盤の奥にあり、腫瘍が小さいうちは外から触っても分かりにくい。左右二つのどちらかが正常なら、月経異常などもない。気づくきっかけは、がんが周囲の臓器を圧迫して便秘や頻尿が続く、腹部に張りやしこりがある、食欲が落ちる−などが多いという。
 排卵を繰り返して表面の細胞が傷つくことが、異常を引き起こすと考えられる。出産経験がないなど排卵の回数が多いと発症の可能性は高まる。家族や親族に卵巣がんの人がいる、子宮内膜症にかかっている人もリスクが高い。
 国立がん研究センター(東京)が運営するがん情報サービスによると、患者は四十代から増え始め、五十〜六十代が最も多い。一八年に卵巣がんと診断された人は一万三千四十九人。女性で最も患者が多い乳がんの七分の一ほどだ。
 ただ、早期発見が難しい分、ステージ1〜4の四段階で表す進行度を見ると、がんが見つかった人の40%は3以上。がん治癒の目安とされる五年生存率(〇九〜一一年)も60%と、乳がん92%、同じ婦人科系がんの子宮体がん81%、子宮頸がん77%に比べて低い。
 治療は、手術と、それに続いて行う抗がん剤が一般的だ。両方の卵巣を摘出すると更年期障害の症状が出る場合があるため、女性ホルモンを補うホルモン治療を受ける例も多い。
 課題の一つは認知度不足だ。英製薬会社アストラゼネカが八〜九月、二十〜七十代の女性千三百十四人に聞いたところ、卵巣がんの発症リスクを高める要因や発症しやすい年代を「分からない」と答えた人は40%超。乳がんや子宮頸がんより10ポイント以上高かった。
 同社は九月、LINE(ライン)アカウント「わかる卵巣がん」を開設。婦人科系がんの研究機関が監修した解説や動画で、基礎知識や治療法を発信している。

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