「教皇の核否定、被爆地が心動かした」 ICAN・川崎哲委員インタビュー

2019年12月28日 02時00分

NPTの現状について話す核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲氏=東京都千代田区で

 「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」国際運営委員の川崎哲(あきら)氏は本紙のインタビューで、広島・長崎で核廃絶を世界に訴えたローマ教皇フランシスコが核兵器を保有することで敵対国の核使用を思いとどまらせる「核抑止」の考え方を否定した点を評価した。核軍縮が停滞する現状を踏まえ、核兵器禁止条約の発効を急ぐ考えも強調した。 (聞き手・大杉はるか)
 -教皇の訴えの意義は。
 「核兵器の『使用』だけでなく『保有』も倫理に反すると言った。保有に言及したことで明確に核抑止を否定した。被爆地が教皇の心を動かしたのだろう。核兵器禁止条約など国際法の重要性に触れた点もポイントだ」
 -来春は核拡散防止条約(NPT)再検討会議がある。
 「来年はNPTの発効から五十年、無期限延長決定から二十五年目だ。(米ロ英仏中)五カ国に核保有の特権を認めることに反対もあったが、核廃絶を進める条件付きで無期限延長が決まった。核保有国は二十五年間で核廃絶に近づけたか説明する責任がある」
 -会議での有効な軍縮合意は困難視されている。
 「五年前に続き合意なしなら、NPT条約体制そのものの信頼性が失われる。NPTから離脱する国が出る恐れがある」
 -核軍縮の停滞で核拡散の危険が高まるだろうか。
 「今年は冷戦終結三十年。核保有国は、終わったはずの核兵器の役割を探し続けている。核兵器を良いものだと保有国が振る舞うから、まねする国が出てくる。核兵器は悪だという共通の規範を作らないと、皆が核を持とうとするだろう」
 -核兵器禁止条約とNPTの関係は。
 「NPT六条に規定された核軍縮義務を具体化したのが、禁止条約だ。両条約とも最終ゴールは核廃絶。先にそこまで行ける国が禁止条約に参加している」
 -日本は禁止条約に参加していない。
 「日本政府は米国の核抑止力の強化をうたい、核の先制不使用にも反対するなど核戦略の積極的な加担者だ。これは核の役割を縮小させるという過去のNPT合意にも反する。そのような姿勢のままでは、禁止条約に入れない」
 -禁止条約は、発効に必要な五十カ国のうち、三十四カ国が批准している。
 「遅くとも来年末までの発効を期待する。NPTが危機だからこそ、早く発効させないといけない」
<核拡散防止条約(NPT)と核軍縮> NPTは6条で軍縮義務を規定。だが1987年に米国と当時のソ連が交わした中距離核戦力(INF)全廃条約は今年8月に失効。核弾頭数などを制限する米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉も進まず、軍縮規範が軽視されている。安倍政権が2013年に決めた国家安全保障戦略は「核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」と米国の核兵器を肯定。米国が18年に公表した核兵器使用のハードルを下げる「核体制見直し(NPR)」を、当時の河野太郎外相は「高く評価」した。

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