熱海土石流 盛り土届け出受理 「聞き取りで実態把握」 議会で市、担当者の回答説明

2021年12月8日 08時02分
 熱海市伊豆山(いずさん)の土石流災害で、被害を甚大化させたとされる盛り土の造成業者が提出した届け出を空欄が残るまま市が受理していた問題を巡り、市は七日の市議会十一月定例会で、当時の担当職員が業者からの聞き取りに基づき実態を確認して受理していたと明らかにした。ただ、本来は記入が必要で、受理した経緯は依然として不明。市は「検証中」としている。(山中正義)
 届け出は二〇〇七年三月、県土採取等規制条例に基づき神奈川県小田原市の不動産管理会社が市に提出、一カ月後に受理された。しかし、条例で記載が求められる九項目のうち災害防止方法、土の運搬方法、跡地利用の三項目が未記入だった。県や市が十月に公開した行政文書で明らかになっていた。
 市観光建設部の宿崎(しゅくざき)康彦部長は答弁で、通常は届け出の審査過程で未記入や誤記載があった場合は補正を通知し、加筆などを求めると説明。空欄だった三項目は「いずれも重要な内容」との認識を示した。
 しかし、問題となった盛り土の届け出は空欄のまま受理され、市は当時の担当者に経緯を確認。担当者から「現場に赴き、事業者からヒアリングを行い、未記載部分の実態も把握した上で受理した」との回答があったと明らかにした。
 市によると、ヒアリングした際の記録は残っていないという。
 また、空欄が残る届け出を受理した場合の問題については、宿崎部長は「災害防止や跡地整備を図るための指導を行う上で、支障を生じかねないことを否定できない」と述べた。

◆被害者の会会長、初の講演 小田原で盛り土の法整備訴え

 熱海市で七月に発生した土石流災害の遺族や被災者でつくる「盛り土流出事故被害者の会」の瀬下(せしも)雄史会長(53)=写真、千葉県=が五日、神奈川県小田原市で「人災か?天災か?−熱海盛り土流出事故の実態から考える−」と題して講演した。土石流災害について講演するのは初めて。「違法盛り土は日本中に存在する。制度を抜本的に見直すため、要望があれば今後も講演したい」と語った。
 土石流の犠牲者は二十六人で、女性一人は今も行方不明。瀬下さんは母(77)を亡くした。土の中に二十二日間埋まっていた遺体と対面した時、生前の面影は一切なかったという。瀬下さんは時折声を詰まらせながら、「生き埋めになりました」と会員制交流サイト(SNS)で助けを求めながら死亡した女子高生(17)や五歳の女児を残して犠牲になった母親(44)らの事例を紹介した。
 盛り土の造成が被害を甚大化させたとされる点については、「元々の地盤は強固な岩盤で、土石流はすべて盛り土」と主張。造成した小田原市内の不動産管理会社(清算)らの責任のほか、(1)不適切な盛り土工法を把握しながら許可した(2)盛り土が届け出の三倍になった(3)法的拘束力のある措置命令を見送った−として、熱海市の対応も問題視した。
 八月に二十人で発足した被害者の会は現在、七十人に拡大。今回の土石流を人災と捉え、集団訴訟の勝訴や盛り土を巡る法整備、違法業者の排除などを最終目標に、永続的に活動する考えを表明した。会場は満席の約百人が詰めかけ、集まったカンパ六万四千二百円が「訴訟費用の一助に」と贈られた。
 講演の主催者は「各自治体の条例の内容がばらばら。規制が緩い自治体や条例のない自治体へ運ばれた盛り土は適正に処理されたか確認できず、全国一律の法制化が必要」と強調した。(西岡聖雄)

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