令和発表9日前、首相意向をくみ 万葉集限定で元号案依頼

2019年12月29日 02時00分
 政府が四月一日の新元号発表九日前の時点で、候補名考案を委嘱していた中西進元大阪女子大学長(日本古典)に、現存する日本最古の歌集「万葉集」限定で元号案作成を依頼していたことが分かった。中西氏はその二日後に「令和」を提案した。関係者が二十八日、明らかにした。国書(日本古典)、とりわけ万葉集からの採用にこだわった安倍晋三首相の意向を受け、発表直前の土壇場で決着した令和選定過程の詳細が判明した。
 関係者によると、首相は三月上旬、政府の担当者が元号選定基準に沿って絞り込んだ候補名十数案を初めて見た。しかし首相には「ぴんとくるものがなかった」(官邸幹部)ため、絞り込み段階で対象外となった案も含めて検討すると、万葉集に収められた山上憶良(やまのうえのおくら)の歌の一節にある「天翔(てんしょう)」が目に留まった。中西氏の案だった。
 ただ天翔は、日本語の音を表すために漢字を当てはめた万葉仮名から考えられたものだった。葬儀会社の名称にも使われており、担当者は難色を示したが、それでも首相は天翔に執着した。
 二十三日、担当者は中西氏に「庶民のことを詠んだ歌が万葉集になかったか。万葉仮名そのものを使わない候補名をお願いする」と電話で要請した。中西氏が二十五日に「新しい案ができたので郵送する」と伝えると、担当者は「電話で聞き取るので今すぐに教えてほしい」と求め、その新たな数案の中に令和があった。二十六日に正式な資料が送られてきた。
 首相や菅義偉(すがよしひで)官房長官ら政権幹部は二十七日の会議で、令和が最適との見解で一致し、新元号として事実上内定した。首相周辺は「幅広い階層からの歌が入った万葉集は、首相の看板政策『一億総活躍社会』のイメージとも重なった」と語る。この時点で最終候補は令和を含む五案だったが、日本テレビが同日のニュースで最終候補の数を五つと報じたため、二十八日に宇野茂彦中央大名誉教授(中国哲学)が考案した「万保(ばんぽう)」を加えた計六案に変更された。

中西進氏

関連キーワード

PR情報

政治の新着

記事一覧