生きづらさを抱える人の「心の回復」をアートで うつ病を経験した画家・赤石春菜さんがNPO設立

2021年12月8日 10時06分
 「家庭や職場で悩んだ時の居場所に」—。かつてうつ病に苦しんだ千葉県酒々井しすい町の画家赤石春菜さん(25)が、うつ病経験者らと共に、生きづらさを抱える人をアートを通して支援するNPO法人「heArt across Japan(ハートアクロスジャパン)」を設立した。絵を描いて感想を言い合い、心の安定を促す活動を行っているほか、人々が集うアトリエ設立へ準備を進めている。(鈴木みのり)

ハートアクロスジャパンが実施するワークで制作された作品

 高校卒業後、障害者支援施設の職員として介護業務に従事していた赤石さんは、体調が多少悪くても決して休まなかった。休日出勤もいとわなかった。「誰にも頼らずに生き、完璧に仕事をしなければ」。就職から5年たった23歳の時、仕事に行くと高熱が出るようになった。
 「心がぽっきり折れた」。退職後の診断はうつ病だった。「自分は死ななければいけない」と、ロープを用意したこともある。遺書を書こうとしたが、気持ちを文字にすることすらままならなかった。
 ベッドから起き上がるため、始めたのが高校時代に描いていた油絵だった。最初は1時間作業するだけでも苦労したが、次第に描きたい作品が次々と思い浮かんだ。暗い雰囲気の絵を描くことが多かったが、次第に明るい色使いを選ぶように。「アートは自分の心を映す存在」と思った。
 1年半後、病状が回復。「自分の経験を基に、アートを通して苦しんでいる人の心の回復や社会復帰を支えたい」と今年1月、団体を設立した。

アートを通して生きづらさを抱える人を支援する団体「heArt across Japan」のメンバーと話す赤石春菜さん㊧。手前の作品は赤石さんが描いた=千葉市中央区で

 団体の名前には「アートで日本をつなぎ、人の気持ち(heart)を大事にしたい」との思いを込める。インターネット上でうつ病の経験を告白し、会員の募集を始めると、うつ病やうつ状態に苦しんだ経験のある人のほか、発達障害が分かり会社を退職した人も加わった。現在は20〜50代の10人で活動している。
 9月からビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で、参加者にペンや色鉛筆などで絵を描いてもらい、画面越しに感想を交わす活動を15回ほど実施している。新型コロナウイルスによる自粛の影響で他人とのつながりを求める人が加わることもあった。「集中できた」「作品を褒められてうれしかった」と前向きな感想が寄せられている。
 現在は、誰でも自由に絵を描けるアトリエを千葉市内に設立するため、ネット上で資金を集めるクラウドファンディング(CF)を実施している。赤石さんは「アートには心の回復を促す力がある。悩みがある人に対して、自分のことを分かってくれる誰かがいる場所をつくっていきたい。いつか道が見えることを諦めないでほしい」と話す。
 CFは来年2月2日まで。CFページはこちら

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