5万円クーポンより現金派の自治体続々 印刷や配布が煩雑、商品やサービスの線引き難しく

2021年12月9日 06時00分
 18歳以下への10万円相当の給付を巡り、そのうち5万円分のクーポンを現金に切り替えようとする動きが各地で広がっている。政府は現金とクーポンの2本立てを原則とし、「自治体の実情に応じて」例外を認めると説明するが、どういうケースが当てはまるかは不明確だ。岸田文雄首相は8日の衆院本会議で、具体的な基準を定める意向を示したが、実務を担う自治体からは制度設計のあいまいさに不満が漏れる。(山口哲人)
 全額、現金で給付する意向を表明しているのは群馬県太田市や静岡県島田市、大阪市など。クーポンの印刷や配布の煩雑さ、利用できる商品・サービスの線引きの難しさなどが理由だ。
 同様の検討を始めた愛知県犬山市の山田拓郎市長は本紙の取材に「給付のスピード、市民の利便性や満足度などを考えると、現金給付の方が効果が高い。そもそも市民はクーポンを望んでいない」と主張し、政府に柔軟な対応を求めた。
 政府がクーポンにこだわるのは、貯蓄に回りやすい現金に比べ、子育て関連の支出が確実に見込め、地域経済の下支えにもつながると判断しているからだ。現金5万円を先行して年内に、残る5万円分のクーポンを来春の卒業、入学シーズンまでに配る予定で、松野博一官房長官は「それぞれ別の給付措置で、同時に支給することは想定していない」と強調する。
 首相は衆院本会議の各党代表質問で「クーポン給付を原則として検討してほしい。どのような場合に(全額)現金給付ができるかは、自治体の意見を伺いつつ具体的な運用方法を検討する」と語った。
 ただ、自治体が独自判断で現金給付に切り替えた場合について、政府高官は「クーポン給付とは異なる取り組みなので、5万円分の財源は自治体が負担することになる」と語り、国の予算を使うことを見送る考えを示した。

◆1999年の「地域振興券」効果は使用額の3割

 政府はクーポン配布によって、子育て・教育支援と消費喚起の両面の効果を狙うが、専門家や野党からは疑問の声が上がる。
 経済対策でのクーポン配布の前例では、政府は1999年、65歳以上の年金受給者らを対象に2万円分を支給した「地域振興券」がある。ただ、旧経済企画庁(内閣府)によるその後の調査で、振興券の支給効果で消費が増加したのは、使用額の32%しかない、と結論付けた。
 大和証券の末広徹氏は「(今回も)効果は薄いと言わざるを得ない。消費者の求める商品などがクーポンの対象にならなければ、消費の純増分はやはり3割程度にとどまるだろう」と分析する。
 子育て・教育支援の効果についても、野党などから「金額や回数が不十分だ」との声が上がる。現金を含めた計10万円だけでは、塾代など継続的に費用がかかる支援にはつながりにくいためだ。
 また、クーポン配布は現金に比べて自治体の事務が大変で、家計が苦しい世帯への支給がより遅れる懸念がある。地方自治体がクーポンの使途を狭めるほど、特定の事業者のみが潤いかねない問題もある。(坂田奈央)

関連キーワード


おすすめ情報

政治の新着

記事一覧