月の収入13万円、借金返済11万円の一人暮らし…「絵を描いていればつらいこと忘れられる」<新宿共助>

2021年12月9日 06時43分

「絵を描いているときは、つらいことも忘れられる」と話す女性

◆新宿共助 食品配布の会場から

 机の上に水彩の風景画を見つけた。郷愁を誘う坂道はかつて旅した中国の田舎町。「絵を描いていればつらいことが忘れられる」。子どものころの夢は漫画家だった。テクニックは美術短大の通信課程で学んだ。
 自民が絶対安定多数を獲得した衆院選の投開票日から二日後の十一月二日、多摩地域の一軒家を訪ねた。一人暮らしの女性とは都庁前の食品配布会場で出会った。五十八歳。非正規社員として週五日働き一カ月の収入は十三万円。借金が三百万円くらいあり、返済に月十一万円が消える。フリマアプリで持ち物を売って生活費にする。料理好きの知人が手作りのパンをくれるので助かっている。
 借金がふくらんだのは、職場の同僚男性からストーキングされて十分には働けなくなり生活費をまかなうためにカードローンに手を出してしまったからだ。結婚したいと思った人がいたこともあったが、関係が深まりそうになると避けてしまうことが続いた。「男性が父のような人ばかりではないとは分かっているのですが…」
 父は教師だった。生徒には人気があったが、家の中では暴力的だった。殴られる母や兄、祖母を見るたびに恐怖を感じた。自分に手を上げなかった父は、小学校高学年になったころ胸を触ってきた。受けたショックは「自分が悪いからだ」と心の中にしまい込んだ。
 手首を切るリストカットを繰り返した。「生きていても仕方がないと思った」。受験勉強は手につかず、高校卒業後はアルバイトや非正規労働で働いた。
 四十代になり、母が白血病、父がアルツハイマー病を相次ぎ発症した。二人の介護でうつ症状が悪化した。「嫌いな父に、なぜこんなことをしなければならないのかと。とてもつらい時期でした」
 その父も六年前に亡くなった。精神科へ通い、生きづらさとも向き合えるようになってきた。「今は絵画教室を開けたらいいなと思っています」。絵のことを話しだすと笑顔になった。(中村真暁)

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