<曇りのち晴れ>ガラスの森の名物館長

2021年12月9日 07時23分
 神奈川県箱根町の「箱根ガラスの森美術館」の岩田正崔(まさたか)館長が9月末、82歳で永眠した。取材のたびに「次は奥さんと一緒に来て」が口癖だった。闘病中とは知らず、急逝する8日前の電話で「忙しくて当面行けません」と、ばか正直に答えたことが悔やまれる。
 妻はマスコミ嫌いで取材先への同行も嫌がるが、館長は例外だった。理由を聞くと、館長が数年前、私に「あなたから逃げ出さなかった奥さんに感謝しなきゃ」と言ったからだという。妻の気持ちを代弁してくれたらしい。妻は「一番言ってほしかった言葉。分かってくれて、心からうれしかった」と明かした。
 開館時から25年間館長を務め、女性に喜ばれる運営に腐心した。年間50万人、リピーター率50%の入館者の8割は女性。雨傘に加え、館内に300本の日傘を置く心遣いが粋だ。
 戦争など多くの女性が泣いた時代は暗黒。女性が笑顔で活躍する社会はきっと明るい。きょう9日は館長をしのぶ会が開かれる。「来年の妻の還暦祝いに赤い日傘はどうだろう」と館長に助言を仰ぎたかった。 (西岡聖雄、60歳)
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厚い曇り空でも雲の向こうには必ず青空がある−
そんな思いを胸に、記者が暮らしの出来事を綴(つづ)ります。

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