<東海第二原発 再考再稼働>(36)組織の信頼性も審査を エネルギー管理士・小野村一博さん(63)

2021年12月9日 07時22分
 中小企業の省エネルギー化を支援する会社「エナジー311」を運営する傍ら、日本原子力発電東海第二原発(東海村)をはじめとする原発問題やエネルギー政策全般について、国や自治体に質問を投げ掛けている。社名に「311」を入れたのは、原発に対する問題意識からだ。
 原発に関心を持ったきっかけは、東京電力福島第一原発事故直後に内閣官房参与に就任し、菅直人政権の事故対応に助言した田坂広志・多摩大大学院教授(当時)が、原発の安全性の議論で「人的・組織的・制度的・文化的安全性」という考え方を示したことだった。従来は技術的な面ばかりが取り沙汰されていたが、東電や原電の企業体質を注視するようになった。
 原子力規制委員会の更田豊志委員長は七月の記者会見で、原電が敦賀原発二号機(福井県)直下の断層データを書き換えていた問題を巡り「(東海第二と)なぜアプローチが違うのか。(社内の)審査チームを引っ張る層の意思が働いたのかと思われる」と発言した。真意を確かめるため更田氏に質問状を送ったが、今のところ返事はない。
 いずれにせよ、データ書き換えという重大な問題が発覚した以上、原電の安全文化やガバナンスには問題があると思わざるを得ない。「組織的安全性」に着目するならば、技術的なことの書類審査にとどまらず、組織としての信頼性も審査するべきだ。
 県政に目を向けると、大井川和彦知事は政府が掲げる「二〇五〇年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」について「ほとんど不可能と思われる宣言をするよりは、まずできることを」と話し、臨海部に新エネルギーの産業拠点を整備する計画を打ち出した。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気温上昇は人的要因によるものと断定している。できるかできないか、ではなく、脱炭素は早急に実現しなければならない課題だ。
 即刻原発ゼロにと訴える団体もあるが、電力需要を賄いながら火力発電を減らしていくには、原発をしばらく維持することが現実的には必要だろう。ただ、省エネを進めつつ、最終的には再生エネのみで需要を満たすことは可能なはずだ。
 中小企業のエネルギー診断をしていると、かなり無駄が多いことを実感する。設備を新しくすれば、半分の電力消費で済む場合もあるし、設備投資をしなくても、設定を一つ変えるだけで年に百六十万円分の電力を節約できた例もある。
 企業や市民の省エネの努力は大切だが、もちろんこれだけで火力発電、さらには原発をなくすのは難しい。原発を「重要なベースロード電源」としているエネルギー政策も根本的に変えなければならない。それには政治の力が必要だ。これからも国や自治体に問い掛けていく。(聞き手・保坂千裕)
<おのむら・かずひろ> 1958年、土浦市生まれ。筑波大第三学群基礎工学類変換工学専攻卒業後、日立電線(現・日立金属)に入社。土浦工場で電気設備の保守管理などに従事した。2013年に早期退職し、14年に「エナジー311」を起業。土浦市在住。

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