<社説>国会論戦始まる 聞く力と提案力を競え

2021年12月9日 07時51分
 岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まった。衆院選後初の国会論戦で、就任間もない立憲民主党の泉健太代表=写真=は政策立案重視の姿勢を打ち出した。国会が立法府という本来の機能を取り戻す好機である。首相と泉氏はそれぞれ「聞く力」と「提案力」を競うべきだ。
 泉氏の質問内容からは「対決」と「提案」のバランスへの配慮がうかがえる。
 政府のコロナ対策に関し、首相の自民党政調会長当時の対応や二〇二一年度補正予算案提出を「遅すぎる」と批判する一方、首相が表明した「人に温かい資本主義」には「よい言葉だ」と同調し、コロナ対策や経済政策を中心に十七項目にわたって提案した。
 これに対し、首相答弁は政府の取り組みを説明するにとどまり、泉氏の提案に前向きな答えはほとんどなかった。首相自身が党総裁選で言及した金融所得課税の段階的強化を求められても、「選択肢の一つ」と述べるにとどめ、優先課題とは位置付けなかった。
 論戦を通じて唯一、接点と言えるのは十八歳以下の子どもへの十万円相当の給付だ。泉氏はクーポンでの給付は事務費が膨らむとして、現金での一括給付を各自治体に認めるよう求め、首相は全額現金での給付についても「具体的運用方法を検討する」と答えた。
 半額はクーポンでという自公両党間の合意にもかかわらず、政府が全額現金支給の容認に転じたのは、立民議員の聞き取り調査によりクーポン発行で事務費が九百六十七億円増えることが分かり、国民の批判が強まったためだ。
 政権が進める政策の問題点を厳しく指摘することでこそ、野党の提案が生きる好例だろう。
 九年近い安倍・菅政権の政府は国会を軽視し、野党が問題点や不正を指摘しても聞く耳を持たず、国会は政府提出の法案や予算案を与党の「数の力」でそのまま成立させる追認機関に堕してきた。
 立法府再生に向けて、首相は意見を幅広く「聞く力」が、泉氏は政権与党に対する追及力と政策提案力が、今後の国会論戦を通じてそれぞれ問われることになる。

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