仮想通貨の投資トラブル 「知人を信じ…」後絶たず SNSで勧誘、若者の被害も拡大

2021年12月9日 08時56分

愛知県内の女性が、知人から仮想通貨の投資を持ち掛けられたLINE(ライン)のやりとり

 実体のない「仮想通貨(暗号資産)」の投資トラブルが後を絶たない。友人や知人から誘われると信じてしまいがちだが、中には三千万円もの大金を預けて取り返せなくなった人も。会員制交流サイト(SNS)などを通じて投資話が広がる中、若者が巻き込まれるケースも増えており、専門家らは注意を呼び掛けている。 (細川暁子)

◆戻らぬ大金 訴訟に

 「将来、絶対にお金が増えるから。やるなら、早い方がいい」。愛知県内に住む五十代の女性は二〇一八年春ごろ、知人女性から仮想通貨「ビットコイン」を使う投資を持ち掛けられた。投資先は海外企業。現金を出資すると、その二倍以上の利益が配当として得られるとのことだった。女性は仮想通貨の仕組みをよく知らなかったが、信頼できる知人だったため、全財産の現金三千万円を一括で手渡しして預けた。契約書は受け取っていないという。
 知人に手続きを任せ、女性は自分のスマートフォンに投資用アプリをダウンロード。画面上では、ビットコインが入金されているように見えたが、一年ほどたつと、そのアプリが突然使えなくなった。知人に尋ねると、別の企業の投資アプリにコインを移し替えたと説明された。その後、そのアプリも使えなくなったため、知人を問いただしたところ、「私もコインを引き出せなくなった。私も被害者」などと言われた。
 女性は今年六月、地元の消費生活センターに紹介された弁護士に相談。他にも同様の手口でこの知人に約六百万円を預け、取り戻せていない人がいることを教えられた。女性はその人と一緒に、知人に返金を求める訴訟を起こす予定だ。「家族のためにためた大金を知人だからと信じ切り、預けてしまった。自分が情けないし、悲しい」と声を震わせる。

◆コロナ禍 影響懸念

 国民生活センターによると、二〇年度に寄せられた仮想通貨に関する相談は三千三百四十四件。ピーク時の一八年度の三千四百五十五件から減少しているが、相談件数に占める十〜二十代の割合は、一八年度の20%から二〇年度は23%に増加。消費者問題に詳しい名城法律事務所(名古屋市)の正木健司弁護士(45)は「コロナ禍で生活が苦しくなった人がつけこまれる危険性がある」と懸念する。
 運用益の配当や還元をうたって出資金を集める詐欺的商法は、百年以上前に米国で活動した詐欺師チャールズ・ポンジに由来し「ポンジ・スキーム」と呼ばれる。実際には運用する事業や物品は存在せず、後から参加した出資者のお金を以前からの出資者に渡す自転車操業で成り立っている手法だ。近年は仮想通貨を悪用したポンジ・スキームもあるといい、「よかれと思って勧めた結果、自分が加害者になってしまうこともある。実態が分からない投資に手を出さないで」と正木さん。不審な投資勧誘を受けた場合は各地の消費生活センターや弁護士会などに相談するよう促す。
 ポンジ・スキームを巡っては、日弁連が八月、行政による被害回復制度を求める意見書を消費者庁などに提出した。日弁連消費者問題対策委員会副委員長の大森景一弁護士によると、被害者が警察に相談しても「民事の問題」として被害届を受理してもらえなかったり、訴訟を起こしても相手の財産がなくなったりしていて被害回復につながらないケースが多く「野放し状態」だという。意見書では、ポンジ・スキームを主導した事業者に対して、国が被害金の納付を命じて被害者に分配したり、破産手続きの開始を申し立てたりする制度の導入を訴えている。

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