ボーカルは菓子店若旦那、ドラマーはタクシー運転手…東京・八王子発パンクバンド「ニューロティカ」結成38年で初の武道館へ

2021年12月9日 17時00分


武道館公演を目指し練習するパンクバンド「ニューロティカ」。(左)からカタルさん、ナボさん、アツシさん、リョウさん=東京都杉並区で(平野皓士朗撮影)

 東京都八王子市で結成されたパンクバンド「ニューロティカ」が、39年目にして初の日本武道館(千代田区)での公演に臨む。ピエロの衣装とメークがトレードマークのボーカル・アツシさん(57)は、実家の菓子店の若旦那。ドラマーのナボさん(55)はタクシー運転手。4人のメンバーそれぞれ別の仕事と掛け持ちしながら、来年1月3日、「心燃会しんねんかい」と銘打った晴れ舞台に臨む。(加古陽治)

ライブ活動のない日、アツシさんは実家の藤屋の店先に立つ=加古陽治撮影

 今月初め、JR八王子駅から十分余りの住宅街にある菓子店「藤屋」を訪れると、奥にアツシさんがちょこんと腰掛け、店番をしていた。間口2間(約3・6メートル)ほどの小さな店の中には、300種類はあろうかというさまざまなお菓子がぎっしり積まれている。
 祖母が創業して70年。父が病に倒れてから4半世紀近く、母を助けて店を切り盛りする。地元の人に愛され、バス旅行やこども会の行事などでは、手作りのお菓子セットが定番だ。取材中にも自転車で近所の女性がやってきて「あっちゃん、ゆず大根作ったから食べて」と置いていった。
 「仕入れのある日は朝5時起きです。9時に店を開け、夜7時からバンドのリハーサル。終わって家に帰ると11時くらい」。そんな日々を繰り返してきた。

ドラマーのNABOさんは、バンド活動の合間にタクシー運転手としてハンドルを握る=東京都目黒区で(加古陽治撮影)

 アツシさんが、高校の友だちとバンドを始めたのは1984年。デパートの屋上で、人気バンドARBの演奏を聴いて衝撃を受けたのがきっかけだった。東本はるもと昌平さんの漫画「F.O.E.(フォウ)」に登場する、腐敗した政府を相手に闘うホームレスの子供の集団から「ニューロティカ」と名付けた。
 バンドは順調に成長し90年にメジャーデビュー。「ア・イ・キ・タ」がヒットするなどしたが、バンドブームが終わると、華やかな日々は続かなかった。だが、その後も地道にライブ活動を続け、通算回数は2080回。新宿ロフト(新宿区)の公演299回は歴代ナンバーワンだ。
 武道館の日程が取れたとの朗報が届いたのは、昨年のこと。レコード会社との契約が切れるタイミングだったが「コロナでライブがやれず、目指すものがない。大変な時だからこそ、やるしかない」(アツシさん)と意見が一致した。
 コロナ禍以降、夜間に倉庫でアルバイトを続けるベースのカタルさん(55)は「55歳でもこんなにできるんだというくらい動き回ってベースを弾きたい」、音楽学校の講師を務めるギターのリョウさん(45)は「もうないだろうと思っていた場所です。音楽をやめなかったからやってきたチャンス」と意気込む。

武道館公演をするパンクバンド「ニューロティカ」。(左)からカタルさん、ナボさん、アツシさん、リョウさん

 コロナ禍でスタジオが使えない中、それぞれ家で自撮りして映像を編集した曲「翼なきもの達」に、メンバーの強い気持ちが込められている。〈今も俺達走ってる 見果てぬ夢をつかむまで 誰に何て言われたって これがオレらの生き方さ〉。待ちに待った本番まで、3週間余。アツシさんは言う。「いつも通り明るく、激しく、楽しくはっちゃけたい。歌うんじゃなくて、叫びたいです」
 武道館公演の詳細は、特設サイトで。

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