敵基地攻撃議論の勇み足

2021年12月11日 07時03分
 岸田文雄首相が六日の所信表明演説で、日本の安全保障政策について「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討」すると表明したことに対し、読者の皆さんからは危惧する意見が届きました。
 少しだけおさらいです。
 敵基地攻撃能力とは自衛隊が敵の領域内にあるミサイル発射基地などを直接攻撃することです。専守防衛政策を採ってきた歴代内閣は、実際に攻撃できる装備を平素から保有することは「憲法の趣旨ではない」としてきました。
 つまり、敵基地攻撃能力の「保有」は違憲というのがこれまでの政府の立場です。それを変えるなら、憲法との整合性が厳しく問われます。
 本紙は七日付社説で「先制攻撃を意味し、憲法や国際法に違反しかねない『敵基地攻撃』の表現をそのまま演説で使ったことは軽率ではなかったか」と指摘しました。
 読者からも「憲法に詳しい人なら絶対おかしいと思う。首相はあまりにも勇み足だ」との指摘をいただきました。
 今年がちょうど日米開戦八十年の節目だからでしょうか。戦争や戦後の苦しい時代を知る世代は敵基地攻撃能力の保有に戦争のにおいを感じ取ったようです。「私は戦争の恐ろしさを知っている。絶対に戦争は駄目」「戦争を知らない世代には任せておけない。戦争はゲームじゃない。もっと平和と友好を考えて」「戦争を忘れてはならない」などの声が届いています。
 首相は敵基地攻撃能力の保有について約一年かけて議論し、外交・安保の基本方針を示す国家安全保障戦略に盛り込みたい考えのようです。
 二〇一三年に策定されたこの戦略は、当時の安倍晋三首相の意向を反映し、自衛隊増強と日米「同盟関係」の強化などが明記されています。
 同時に、日本が戦後一貫して、専守防衛に徹し、軍事大国とはならず、非核三原則を守る平和国家として歩んできたことが国際社会の高い評価と尊敬を得ており、「より確固たるものにしなければならない」との記述もあります。
 安保戦略を見直すなら、違憲の敵基地攻撃能力の保有に突き進むのではなく、平和国家としての歩みをより強固にする国家戦略に知恵を絞るべきでしょう。それが歴史の教訓だと考えるのですが、いかがでしょうか。 (と)

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