<11日に考えた>「5軒に1軒が空き家」苦悩する足利市 倒壊の危険性「500軒以上」

2021年12月11日 07時25分

空き家の状況を解説する足利市地域おこし協力隊の上岡さん=いずれも足利市で

 中心市街地周辺の空洞化が顕著な栃木県足利市は空き家率が19・9%(二〇一八年、総務省調べ)。県南では最も高い数値で、県内でも日光市、矢板市に次ぐ。放置された空き家は防犯や景観上の問題に加え、地震や豪雨で倒壊の危険性を抱え、防災上の深刻な課題となっている。昨秋から市地域おこし協力隊員として空き家の利活用業務を担う上岡雄晃(ゆうこう)さん(33)の調査活動に同行した。(梅村武史)

記者が調査活動に同行

 上岡さんは同市出身。転勤族の会社員だったが「生まれ故郷の魅力を広く伝える仕事をしたい」との思いから地元に戻った。着任以降約一年間で、市内千カ所超の巡回調査をしてきた。

ヤシの木が伸び放題の空き家

 最初に案内されたのは、往来が多い観光名所そばにある昭和初期建築の木造二階建て。屋根が大きく傾き、外壁全体に絡んだツタが窓ガラスから屋内に侵入していた。「空き家になって数十年。市は所有者と解体に向けて協議を続けている」と上岡さんは解説する。
 続いて、JR足利駅近くへ。
 好立地にある築百年近い家屋は、元は上質な日本建築とみられるが傷みが激しく、庭のヤシの木が道路にはみ出していた。二年前に空き家となり、市が所有者と入居希望者との間を取り持つ「空き家バンク」に登録したが買い手がつかない。上岡さんは「高額のリフォームコストがネックになっている」と話す。
 市東部の中山間地帯にある昭和初期建築の木造二階建ては屋根がはがれ、崩れた壁を覆ったトタンがさびていた。背後の山から伸びた草木にのみ込まれそう。

所有者特定の難しさが壁に

 市は三年前の調査で、倒壊の危険性がある空き家二百七十五棟を確認。だが、上岡さんは「今は五百軒以上あると思う」と語る。
 所有者に解体を要請したり、空き家バンク登録を促すことが自治体の主な対策だが、所有者特定の難しさが大きな壁だ。相続が繰り返されて所有者が子や孫など多数にわたる、相続放棄で所有者がいない、遠方に居住しているなどさまざま。
 特定できても経済的な理由や税金対策で解体に応じない場合も。空き家対策特別措置法に基づく代執行という手段もあるが、公金から解体費用を拠出する難点がある。
 人口減少を背景に全国的に空き家は増えている。総務省による五年に一度の調査で、二〇一八年の空き家率は全国平均で13・6%。北関東はやや高く栃木県が17・3%、群馬県は16・7%、茨城県14・8%。市建築指導課の菊地正史課長は「空き家が長期化するほど倒壊のリスクも高まる。空き家の把握と所有者確認、適切な手続きを一つ一つ確実に進めるしか方策がない」と話している。

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