岸田首相、止まない批判に白旗 10万円給付で方針転換の影に公明党との対立

2021年12月14日 06時00分
 18歳以下への10万円相当給付のうち、5万円分のクーポン支給にこだわってきた岸田文雄首相は13日、条件なしの全額現金給付の容認へと方針転換した。巨額の追加経費発生や自治体の事務負担増といった批判に耐えきれず、白旗を揚げた。与党幹部による「トップダウン」の決定は国民の理解を得られず、既に現金5万円分を先行給付する準備に入っている自治体からは政府の「遅かった判断」(野党幹部)に対する戸惑いの声も上がっている。(山口哲人、川田篤志、上野実輝彦)

◆沈静化するつもりが…混乱に拍車

 「給付金については自治体から本当に多くの意見をいただいた。与野党からもさまざまな指摘があった」
 持ち味が「聞く力」だと自任する首相は13日の衆院予算委員会で、転換の理由をこう釈明した。
 クーポンで支給するには967億円の事務経費がかかる上、新型コロナウイルスワクチンの追加接種などで多忙な自治体にさらなる負担を強いることなどが問題化。政府は「実情に応じて現金での対応も可能にする」として沈静化を図ったが、切り替えを認める基準を示さず、かえって混乱に拍車を掛けた。
 反発の高まりを受け、身内である自民党の高市早苗政調会長ですらこの日、予算委で「もうややこしいことをせず、一括10万円の現金給付ができるよう対応を」と注文した。

◆与党内の溝埋めるためのスピード決着があだ

 子どもへの10万円相当の給付は、もともと先の衆院選で公明党が掲げた公約だった。自民党は、対象を生活困窮者らに絞った給付を主張し、両党の支援策には当初から溝があった。
 与党内の対立が長引けば、岸田政権発足直後からイメージ悪化を招きかねないという事情から、両党は幹事長間で協議。わずか2日間で案をまとめ、先月10日に首相と山口那津男公明党代表が合意するスピード決着を演出した。
 ばらまき批判を回避したい自民と、公約違反という批判を避けたい公明の折衷案に落ち着いた結果、給付は生活支援なのか消費喚起なのかの政策目的が曖昧になり、追い詰められて撤回を余儀なくされた。自民党中堅議員は「クーポンにした理由、地域経済を潤すという趣旨も伝わらなかった」と嘆く。

◆年の瀬迫り…現場からは「遅すぎる」の声

 高市氏は「自治体の準備を考えればタイムリミット」と首相に転換を急ぐよう促したが、年の瀬が迫り、自治体からは「既に遅すぎる」との声が相次ぐ。
 現金5万円の先行給付を年内に予定する東京都内の自治体の担当課長は、本紙の取材に「対象者の少ない町村は可能かもしれないが、大半の自治体は年内の10万円給付は間に合わない」と指摘。同じく今月下旬に5万円の振り込みを計画する都内の別の自治体担当者も「現時点では予算がなく、期待している人もいるだろうが一括給付は無理」と困惑気味だ。
 内閣官房によると、1回の現金給付事務にかかる経費は280億円。2回に分ければ経費は積み上がる。立憲民主党の泉健太代表は13日の党会合で「現場のことを分かっていない首相だと分かってきた。国民だけでなく、役所から正しい情報を『聞く力』も問われている」と批判した。

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