「子どもを投げて。とにかく前に」男性はゼロ歳児を毛布で受け止めた 2人死亡の民家火災

2021年12月15日 06時00分
消防車(イメージ)

消防車(イメージ)

 14日午前0時半ごろ、東京都中野区沼袋1の住宅から出火、木造2階建て約110平方メートルのうち1、2階計約60平方メートルを焼いた。2階から会社員伊藤司さん(63)と妻で自営業の洋子さん(71)が救助されたが、その後、死亡が確認された。1階リビングの石油ストーブ付近が激しく燃えており、警視庁野方署はストーブから出火した可能性が高いとみている。
 署と東京消防庁によると、伊藤さん方は、伊藤さん夫婦と息子夫婦、ゼロ歳の孫の男児の5人暮らし。出火当時、洋子さんは1階にいて、他の4人は2階で就寝中だった。息子夫婦と孫は2階から避難し、けがはなかった。
 現場は西武新宿線沼袋駅の南東約300メートルの住宅街。

◆「助けて」の叫びと泣き声聞こえ

 「子どもを投げて。とにかく前に投げて」。伊藤さん方の隣に住む介護施設職員の男性(24)は、2階のベランダで逃げ遅れている伊藤さんの息子夫婦と孫の男児に気付き、大声で呼び掛けた。投げ下ろされた体を毛布で受け、小さな命をつなぎ留めた。
 14日未明、「ドン、ドン」と大きな音がして男性は外に出た。既に伊藤さん方は玄関先が燃え上がり、近隣住民らが消火器で消火活動に当たっていた。
 「助けて」という叫び声と赤ちゃんの泣き声が聞こえた。暗がりのベランダに、逃げ遅れた息子夫婦と赤ちゃんがいることに気付いた。「すぐには火を消せないかもしれない」。煙が入り込む自分の部屋に戻り、ベッドの上にあった毛布を引っ張り出して再び伊藤さん方の前に立った。
 煙に包まれた高さ3メートルほどのベランダに「投げて」と大声で呼び掛けると、夫婦のどちらかが男児を投げ下ろした。男性は毛布を両腕で広げてクッション代わりにし、落下の衝撃を和らげるためにひざを少し折り曲げながら小さな体を受け止めた。
 両腕で抱えた男児に「大丈夫だよ、大丈夫、大丈夫」と声を掛けながら避難した。その後、妻は自ら2階から飛び降り、息子は消防隊員に救助された。男性は「2人亡くなったのは残念ですが、助かった命もあって本当に良かった」と話した。(山田雄之)

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