来春にも一部区域で人が住めるように...でも「戻りたい」町民はわずか 福島第一原発がある大熊町

2021年12月15日 06時00分
 東京電力福島第一原発が立地する福島県大熊町で2022年春、帰還困難区域の一部の避難指示が解除される。対象は特定復興再生拠点区域(復興拠点)と呼ばれ、ようやく人が住めるようになる。今月3日、住民が復興拠点内の自宅で寝泊まりする「準備宿泊」が始まったが、希望者はわずか。原発事故から11年が近づく中、町の将来は見通せない。(小野沢健太)

壊れた建物が並ぶ中、解体されて更地となった場所も増えている=福島県大熊町で

◆3.11から時が止まったままの家屋

 「こんな状況だからね。泊まろうとする人は見ねぇなぁ」。3日、復興拠点内のJR常磐線大野駅前で、家屋を解体していた男性作業員が周囲の空き地を指さしながら言った。
 かつて町の中心地だった駅周辺には作業員以外の人影はなく、重機が建物を壊す音だけが響く。解体後の空き地が目立ち、残る建物のほとんどに「解体家屋」の張り紙があった。
 路地を入ったところにある住宅地では、屋根が崩れ落ち、家財が散乱したままの家屋が多い。持参の放射線量計を見ると、空間線量は毎時0.4〜0.9マイクロシーベルト。避難指示解除の目安となる3.8マイクロシーベルトは下回るが、国の除染の長期目標0.23マイクロシーベルトは超えていた。
 生活に欠かせないインフラ整備は途上にある。復興拠点内では電気と水道は復旧済み。ただ、水道事業を担う双葉地方水道企業団の担当者は「主要な水道管は復旧したが、個別の住宅につながる配管が損傷し、修理しないと通水できないケースもある」と明かす。下水道は一部で復旧が間に合わず、仮設の浄化槽を使うことになるという。

◆企業や店舗の進出も不透明

 原発事故前は、復興拠点内に町の人口(約1万1500人)の半分以上が住んでいた。しかし町によると、14日時点で準備宿泊を受け付けたのは11世帯23人にとどまる。
 町は避難指示解除後の復興拠点に、町民だけではなく、今後短くても30年はかかる福島第一原発の廃炉に関連する企業や作業員を受け入れる構想を描く。
 具体的には、大野駅周辺に廃炉関連企業や住宅、商店を配置。約42ヘクタールの土地を町が買い取り、企業用地や約50戸の町営住宅、宅地などを26年度までに整備する。
 ただ、進出を検討している複数の企業から打診はあるものの決定に至っておらず、宅地の区画数も未定という。生活必需品を扱うスーパーなどは、出店の見通しが立っていない。町は、大野駅周辺で店舗を持たない移動販売の導入を検討する。

◆「戻りたい」は1割に満たず

 町西側の大川原地区などは19年4月に避難指示が解除され、町役場や住宅、商業施設が整備された。12月1日時点の町の居住者数は923人で、うち住民登録者は356人。他は東電の社員寮に住む人が中心だが、年々減少傾向にある。東電の広報担当者は「町に社員寮を増やす予定はない」という。
 町は復興拠点の居住者を、来春の解除から5年で2600人にする目標を掲げる。ただ、町と復興庁が実施した20年度の町民アンケートでは「戻りたい」は9.6%。回答者の6割が「町に戻らない」で、理由は「(避難先で)すでに生活基盤ができているから」が前年度より17.6ポイント増えて59.1%を占めた。
 避難から10年以上たち、町にとってもどれほどの人が定住するかは未知数で、西銘恒三郎復興相も記者会見で「住まいだけでは定住人口は戻りにくい。生業なりわいがなければ難しいと感じている」と発言。支援に取り組む考えを示したが、廃炉関連以外の企業誘致などが進むかは不透明だ。

 福島県大熊町の特定復興再生拠点区域 町面積の約1割に当たる860ヘクタールで、区域内に住民登録しているのは約2200世帯6000人。帰還困難区域の中で優先的に除染を進める区域として、政府が2017年11月に認定。今年9月末時点の除染進捗しんちょく率は約89%で、解体申請があった家屋約1400棟のうち、10月末時点で1183棟が解体された。


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