<社説>森友訴訟幕引き 裁判でも「隠蔽」なのか

2021年12月17日 07時04分
 国は不意打ちの訴訟終結という手段を選んだ。裁判での学校法人森友学園をめぐる文書改ざんの真相解明は遠のき、自殺した元財務省職員の妻の思いはかなえられない。国会での徹底追及を望む。
 相手の請求をのみ、損害賠償を支払う「認諾」という方法がある。確定判決と同じ効力がある。
 元職員赤木俊夫さんの妻・雅子さんが、国と財務省理財局長だった佐川宣寿氏に損害賠償を求めた訴訟協議で、国は一転、認諾を伝えた。
 つまり雅子さんが求めた約一億円の請求を受け入れる書面を国側が裁判所に提出し、訴訟は即日、終結してしまった。
 これは賠償金を払って、真相を「隠蔽(いんぺい)」する幕引きに他ならない。雅子さんは「負けたような気持ちだ。真実を知りたいと訴えてきたが、こんな形で終わり、悔しくて仕方がない」と述べた。すべてを物語っていよう。
 つまりは国側が訴訟の手続きを逆手にとったのだ。公文書改ざんの詳しい経緯の説明から逃れるためと疑われて当然だ。訴訟終結で証人尋問などは行われず、真相究明は遠のく。政治家や幹部職員の関与が闇に葬られるのは到底許されない。
 そもそも国は全容解明に後ろ向きだった。麻生太郎前財務相は二〇一八年に行った調査のやり直しもずっと拒んでいた。改ざんの過程を示す「赤木ファイル」の存否も「調査中」だったが、裁判所から提出を求められ、やっと今年六月に内容が明らかになった。
 財務省本省が近畿財務局宛てにメールで再三、修正を指示していたものだったが、指示した者の名前などは黒塗りで伏せられていた。詳しい内容は判然としないままだったのだ。要するに国は隠しておきたい事実があるのだろう。
 国側は「いたずらに訴訟を長引かせるのは適切でない」というが、公文書改ざんは民主主義の根幹を破壊しうる重大な不祥事である。はびこる隠蔽主義は、国民への背信行為でもある。
 佐川氏への訴訟などは続くが、国会は今こそ真相解明の努力を尽くすべきである。岸田文雄首相も再調査を否定しているが、説明回避に終始すれば国民の信も失う。

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