コロナワクチン接種証明アプリ、使い道は?「誤り」が表示されるケースも…20日から稼働

2021年12月18日 06時00分
 政府は20日から新型コロナウイルスワクチン接種の電子証明書を発行する。スマートフォンにアプリで登録し、スマホ画面に表示する仕組みだ。デジタル庁は利便性を強調するが、同庁が運用するデータシステムの不備で、登録された接種記録約1億件のうち、433万件に誤りの恐れがあることが明らかになった。このままでは証明書が発行されなかったり、誤った証明書が発行されてしまう。アプリは何が便利で、どこが問題なのか。(坂田奈央、岩田仲弘)

◆海外76カ国で検査緩和、国内飲食店での感染防止を想定

新型コロナワクチン接種証明書アプリで表示される接種証明書

 「アプリを使えば、自治体窓口に行かなくても(申請や交付が)済むし、紙の接種証明書を持ち歩く必要がなくなる」。牧島かれんデジタル相は17日の会見で、その利便性を訴えた。
 アプリのダウンロードには、スマホ(iOS13.7以降もしくはAndroidOS8.0以降)と、本人確認のためマイナンバーカードと4桁の暗証番号、加えて海外用はパスポートが必要だ。
 政府公式の接種証明はこれまで、海外渡航用に限定して紙で発行していた。今回は海外用に加え、国内用も紙とともに電子発行する。海外用は、世界76カ国で利用可能で、出入国時の隔離や検査が緩和される「お墨付き」になることを期待している。
 国内では、飲食店やイベント会場で感染拡大を防ぐために利用者が提示することを想定。もともと社会経済活動の正常化に向け、経済界が政府に導入を強く要望していた。

◆「打っていないのに接種済み」「接種したのに記録なし」…

 接種証明の電子化は、9月に発足したデジタル庁の肝いり事業だ。ところが、政府が運用するシステムで、個人の接種歴に大量の誤りがあることが判明した。16日時点で、誤りの恐れがある「要確認」は433万件に上った。誤りが確実な「要修正」は約10万件。この場合は、スマホ画面に証明が表示されず、自治体に問い合わせるよう案内が表示される。
 誤登録の原因は、全国の接種者データを国が一元管理する「ワクチン接種記録システム(VRS)」にある。市区町村や医療の担当者が接種会場で、タブレット端末のカメラで接種券の18桁の番号を読み取り、接種情報を登録する仕組みだ。その際、手ぶれや明るさの関係で「8」を「3」、「1」を「7」と読み込んでしまうエラーが発生。接種日やワクチンの種類、製造番号などは手入力するため、打ち間違えるミスも相次いだ。
 その結果、他人と取り違えられたり、接種していないのに接種済みになっている、接種日やワクチンの製造番号に誤りがある、などといったミスが次々と明らかになったのだ。

◆データ修正「間に合わないかも」

スマホ画面に表示されるアプリ=デジタル庁提供のデモ動画より

 自治体は、接種記録が記載された紙の予診票とVRSのデータを職員総出で照合する膨大な事務に追われている。首都圏では、千葉市で延べ2万数千件、横浜市で1万2000件、さいたま市で数千件のミスをこれまで修正した。
 ただ、職域接種や大規模接種など、接種券を発行する居住自治体と異なる自治体で接種した場合、予診票が到着するまでに時間がかかり、20日までの修正が「間に合わないかも」といった悲鳴も聞こえる。さらに接種会場で、VRSによる接種券の読み取りそのものが行われなかった場合は「ミスを把握できない。役所に申し出てもらうしかない」(都内の自治体担当者)という。
 牧島氏は16日、「自治体には引き続き(修正を)お願いしたい」と呼びかけた。オミクロン株による感染拡大が現実味を帯びる中、接種記録の誤りが修正できなければ、3回目の追加接種にも影響を与えかねない。
 一方、デジタル庁の小林史明副大臣は「もし間違いがあれば本人からの申請で修正が可能。3回目の接種に大きな影響が出るものではない」と自信を示す。ただ、接種者本人が一定の手間と時間をとられるのは確実だ。

◆3回目の接種券にはQRコードを記載

 政府はVRSの誤データの存在を半年以上前に把握していた。7月の自治体向け説明会で誤りの例を示すなどして修正を呼びかけた。その後もミスを自動抽出できる機能をシステムに追加したが、自治体の負担など問題の完全な解消とはならなかった。
 政府はVRSに約3億8000万円、証明書アプリに約1億1千万円を投じている。自治体からは「3回目の接種時には誤認知のないよう精度を高めてほしい」との声が上がる。
 政府はこのため、3回目の接種券には18桁の数字をとりやめ、読み込む速度が速いQRコードを記載した。明治大大学院の湯浅墾道はるみち教授(情報法)は「誰もが取り残されないDX(デジタルトランスフォーメーション)というのが国の政策だから、足元の自治体でITを使いこなせない人たちにも対応する必要がある」と強調。「ただその場合、紙とデジタルの二本立てになってしまい、かえってコストも手間もかかる。QRコードは、そういう過渡期において、紙とデジタルを併存させるという意味ではある種の解決策ではある」と指摘した。

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