大阪でビル火災 全容解明を急ぎたい

2021年12月18日 07時55分
 大阪駅近くの北新地に立地する八階建てビルで火災があり、多数の犠牲者が出た。四階にある心療内科や精神科のクリニックで起きた惨劇。放火の疑いが持たれており、二年前の京都アニメーション放火殺人事件をも想起させる。
 北新地は西日本屈指の繁華街。出火直後にはビルの窓から助けを求める人の姿もあり、百台近い消防車両が出動するなど街は一時、騒然となった。はしご車で高い階から救出された人もいた。
 建物内に閉じ込められ、火や煙の犠牲になる悲劇は一九七二年に大阪・ミナミのデパートで百十八人が死亡した火災をはじめ、過去に何度も起きている。
 二十年前に東京・歌舞伎町の雑居ビルで起きた火災では、階段やエレベーターホールに衣装箱やビールケースなどが大量に積まれ、四十四人が避難できずに一酸化炭素中毒などで亡くなった。避難路の確保や建物内の定期点検を義務づけ、防火対策を怠った際の罰則を強化するなど、消防法改正の契機となった。ビルの所有者らが防火管理の責任を問われ、有罪判決を受けている。
 今回の火災は三十分ほどで鎮火したにもかかわらず、なぜこれほど多くの犠牲者を出したのか。しかも燃えた面積は二十平方メートル程度でしかない。歌舞伎町の火災と同様、煙に巻き込まれた可能性もあり、通路やドア、階段の状況など避難経路に問題がなかったのか、検証が求められる。
 死傷者のなかには、素早い避難が困難な人がいたことも考えられる。福岡市の診療所で二〇一三年に患者ら十人が死亡した火災を受け、有床の病院や診療所では、人の力だけではなく、自動による火災報知や初期消火、延焼防止などの整備が法令で定められた。
 今回のクリニックはその対象外だったとしても、非常時の通報や消火態勢などは十分だったのか。そういう視点での調査も徹底して行われるべきだろう。
 三十六人が犠牲になった京都アニメーション事件は、殺人などの罪で起訴された男の刑事責任能力を調べるため、二度目の精神鑑定中だ。建物内でガソリンをまき、火を付けた動機はいまひとつ、はっきりしない。今回も放火だとすれば、どんな人物が、どんな理由で凶行に及んだのか。犠牲者の身元特定はもちろん、全容の解明を急ぎたい。

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