<水戸芸術館発 クラシックへの旅>(2)大オルガン46種の音色

2021年12月19日 07時55分

水戸芸術館のエントランスホールのパイプオルガン

 水戸芸術館を訪れたことがある方は、エントランスホールにそびえ立つパイプオルガンに目を奪われた経験があるかもしれません。三千二百八十三本のパイプを有し、四十六種類の音色を誇るオルガンで、一九九〇年の開館に合わせてマナ・オルゲルバウ社が製作しました。日本人の職人の手による楽器としては最大級のものです。
 他の音楽ホールのオルガンはホールの中にあることが多いのですが、当館では訪れる方を最初にお迎えするエントランスに設置されているためお客様との距離が近く、館のシンボルの一つとして親しまれています。
 そもそもパイプオルガンはどのような楽器なのでしょうか。
 オルガンにはピアノと同じような鍵盤がありますが、音を出す仕組みはピアノと全く異なります。ピアノは鍵盤を押すと楽器内のハンマーが弦を叩(たた)くことで音が出るのに対し、オルガンはパイプの下の弁が開いてパイプに空気が通ることによって音が鳴ります。ピアノは「打楽器」、オルガンは「管楽器」に近いと言えるでしょう。
 パイプオルガンの歴史は古く、紀元前三世紀ごろギリシャで発明されたヒュドラウリスという「水オルガン」まで遡(さかのぼ)ります。その原理は、身近なものだと洗面器で例えることができます。水面に洗面器を逆さにして浮かべ、沈めていくと浮力を感じることでしょう。この洗面器の底面に穴をあけ、パイプを差すとそこに空気が通ります。この原理を応用したものがオルガンの起源です。
 その後“ふいご”が取り入れられ、十九世紀半ばまで、演奏中は常に裏方の“ふいご職人”が風を送っていましたが、現代の多くのオルガンでは電動送風機を使っています。
 パイプオルガンは教会に設置されているもの、というイメージがあるかもしれませんが、キリスト教の儀式に用いられ始めたのは九世紀以降のことです。十四世紀にはフランスの作曲家マショーが「楽器の王様」と称するほど、重要な役割を与えられていました。
 宗教改革後の十七世紀には、ルター派が多い北ドイツを中心に大規模なオルガンが作られるようになりました。カトリックの礼拝で歌うのは主に聖歌隊であったのに対し、ルター派の礼拝では参列者全員がコラール(讃美歌(さんびか))を歌うため、それに負けない音量のオルガンが必要とされたというわけです。
 その後、技術の発展とともに地域ごとに個性豊かなオルガンが作られ、十九世紀には六千本以上のパイプを持つ楽器も誕生。コンサートホールにも設置され始め、今ではオルガン曲を純粋な音楽作品として鑑賞する機会も増えています。
 北ドイツの様式を取り入れている当館のオルガンの音色は、プロムナード・コンサート(来年一月十日、十五日)、そしてオルガン・レクチャーコンサートVol.4 バッハが歩んだ道〜その生涯とオルガン音楽〜(一月三十日)でお楽しみいただけます。悠久の歴史に想(おも)いを馳(は)せながら、音のシャワーに包まれてみるのはいかがでしょうか。(水戸芸術館音楽部門学芸員・鴻巣俊博)=毎月第三日曜日掲載
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 チケット(先着順)の予約や問い合わせは水戸芸術館チケット予約センター=電029(231)8000=へ。

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