「この日」のために頑張り、また歩き続ける 選手の信じるパラリンピックの意義伝えたい

2021年12月20日 12時00分
男子100メートルバタフライ(視覚障害S11)決勝でレースを終え、抱き合って喜ぶ金メダルの木村敬一(左)と銀メダルの富田宇宙=東京アクアティクスセンターで

男子100メートルバタフライ(視覚障害S11)決勝でレースを終え、抱き合って喜ぶ金メダルの木村敬一(左)と銀メダルの富田宇宙=東京アクアティクスセンターで

<スポーツ2021年末回顧⑥>
 「この日のために頑張ってきた『この日』って本当に来るんだな。すごい幸せ」。東京パラリンピック競泳最終日の9月3日、得意の男子100メートルバタフライ(視覚障害S11)で念願の金メダルをとった木村敬一(31)=東京ガス=は、涙ながらに語った。背後のスタンドに観客の姿はない。類を見ないコロナ禍の東京大会。思い描いた「この日」とは異なる光景だったとしても、出場をかなえた多くのアスリートが同じように喜びを感じたことだろう。
 生きがい、自己肯定、社会とのつながり―。パラアスリートにとってパラリンピックは、実に多様な側面を持つ。
 木村にとっては、多くの犠牲を払ってあがき続けた日々が、報われた日。同じ競泳の知的障害クラスのエース、東海林大(22)=三菱商事=は、大会前からの不調が響き、男子200メートル個人メドレーの4位が最高。それでも「この日」を、「過酷な状況で戦えた。この先の人生でも胸を張って生きていけそう」と新たなステップと捉えたようだった。
 メダルを取ることだけがパラリンピックの価値ではない。メダルを取っただけで価値になるわけでもないと思う。
 自国開催の大会は、どの国際大会とも異なる重みを持っていただろう。国内のパラスポーツを取り巻く機運も高まり、本番で最高潮を迎える―。「この日」を競技生活の節目と考えていた選手も多かったはずだ。そして大一番を終えた今、新たな使命を見つけ、突き進む人たちがいる。
 車いすラグビーの主将を務めた池透暢(41)=日興アセットマネジメント=は「(2024年の)パリは目指すことになると思う。選手発掘も積極的にしたいし、その後の自分のことを考えながら3年間を使いたい」と言った。東京大会が「最後かも」と話していた競泳男子の鈴木孝幸(34)=ゴールドウイン=は、金を含む五つのメダルを獲得。「せっかく応援してくださる方も増えたので、ここですぐ引退となると…。他の大会でもパフォーマンスを見せたい」と競技会やイベントに駆け回る。
 鍛え上げた力を目の前で見せたい。共生社会への理解を広げたい。それぞれが考えるパラリンピックの意義を最大化させるため、「この日」から立ち止まることなく歩き続ける選手たち。その姿に最大限のエールを送りたい。(兼村優希)

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