第6波で自宅療養中の死亡出ないよう...涙浮かべ電話した保健所の過重負担は見直せるか

2021年12月21日 06時00分
<第5波の教訓 自治体の現場から㊥>

健康観察のため電話をかける東京都江戸川区の保健所職員ら。最初の電話までに4日かかったケースもあった=8月18日、江戸川区内で(区提供)

 「お待たせしてしまい申し訳ないです。ご体調はいかがですか?」。新型コロナウイルスの「第5波」が東京都内を襲った8月上旬、江戸川区の保健所では約80人の職員が、自宅療養者への健康観察の電話などに追われていた。
 新規感染者は最多で1日に371人。自宅療養者は2000人近くに上り、濃厚接触者も含めると、健康観察の対象は約3000人。感染者の発生届は増え続け、目に涙を浮かべて電話をかけ、ふらつきながら歩く職員も。それでも最初に健康観察の電話を入れるまでに、最長で4日かかった。
 重症化のリスクがあるのに連絡がつかない自宅療養者には、保健師が自宅まで出向いて安否確認した。区の天沼浩健康部長は「職員たちは『1件でも多く処理しなければ』『リスクを見逃したら重症化する』と、重圧の中で仕事していた」と漏らした。
 文京区でも職員が健康観察に追われた。「夜間まで業務が続く状況が長期化し、体調を崩す職員がいた」と担当者は明かす。
     ◇
 第6波に向けて、保健所の過重な負担をいかに軽減するかが課題だ。
 たとえば、江戸川区は応援の職員を40人増員して120人態勢にしたのは8月中旬。天沼部長は「もっと早く増員できればよかったが、想定より感染拡大のスピードが速く、計画的にできなかった」と悔やむ。
 第6波では新変異株の「オミクロン株」などをにらんで、1日の感染者が500人程度に膨らむことを想定。最大で150人態勢にできるように応援態勢の名簿を作成した。
 千代田区は、9月中旬から11の訪問看護ステーションに健康観察の一部を委託している。区保健所の原田美江子所長は「特に警戒しなければならない患者に限って保健所が観察する」と話す。杉並区も民間事業者と契約を結び、軽症者らに対する1日2回の電話での健康観察を委託する。
     ◇
 東京都も、保健所の負担軽減に向け、コロナ患者を最初に診断した医療機関に療養終了まで健康観察を行ってもらう仕組みを計画する。患者1人当たり2万800円の協力金などを支払うといい、来年3月までに20億円弱の支払いを見込む。ただ、自宅療養者が何日も連絡がつかないケースでは、医療機関が患者宅に行くことは難しく、保健所に業務を引き継ぐ。
 東京都内では、武蔵村山病院が8月、自宅療養していた50代の女性患者の発生届について、保健所に提出せず、保健所の健康観察を受けられないまま亡くなっていたことが判明した。病院は原因について、業務が逼迫ひっぱくして看護師が忘れていたと説明する。
 第5波では、この女性患者を含めて自宅療養中の死者は都内で60人に上った。第6波で医療現場などが混乱した際に、情報共有のミスは起きないのか―。都担当者は「自宅療養中の死亡が出ないよう、情報共有の徹底を求めていく」と話す。(太田理英子、長竹祐子、井上靖史、加藤健太)

関連キーワード


おすすめ情報