「何これ、会議だよね?」日大理事が明かす自由な言論なき理事会 田中英寿被告が君臨した弊害

2021年12月20日 18時52分
 田中英寿被告が13年間トップに君臨した日本大学では、理事会が自浄能力に欠け、ガバナンス(統治)不全を招いたとされる。現職理事の1人で文理学部長の紅野こうの謙介教授(65)は「空気を読むことが重視され、本当の多様性に欠けていた。田中さんの権威を高めてしまった」と振り返る。

日大のガバナンスについて話す文理学部長の紅野謙介教授=東京・内幸町の中日新聞東京本社で

◆限られた人しか発言せず

 「何これ、会議だよね?」。2019年1月に理事に就任した紅野さんは、ごく限られた人しか発言しない理事会のありように驚いたという。
 最大36人の日大理事は、16人の学部長のほか、学識経験者や同窓会組織の校友会などから選ばれる。学識経験者も実質は校友会出身者で、校友会長である田中被告の任命権が強く働いていた。
 学部長以外の理事は「一枚岩のように感じられた」と紅野さん。「田中さんの圧倒的な存在感が、自由な言論を封じていた面がある」。田中被告が11月29日に逮捕されてから、ようやく会議で意見が交わされるようになった。

◆人事考課表、反体制派に網かけ

 大学本部に批判的な姿勢を示せば、学部の予算や人事で不利益を被るのではという懸念もあった。紅野さんは事件捜査の中で、学内の事情について検事から聴取された際、「見たことがありますか」と教職員の人事考課表を示された。「〇〇派」などと記され、反体制派とされる人には網かけがされていた。「不当な人事のうわさが1、2例聞こえてくるだけでもやりにくくなる」と明かす。
 新理事長を兼ねる加藤直人学長は、10日の記者会見で「田中前理事長と永久に決別する」と宣言。紅野さんは、過去にも独裁的な運営を進めたトップはいたとして「田中さんが特殊なわけではない」と強調する。「人心掌握に優れ、対立している人同士を束ねる力はあった。権力の一元化が起きた結果、こうした問題が生じた」
 立て直しに向けて、教員や管理職レベルから女性を増やすとともに、チェックや政策提言を行う組織が必要だと指摘する。「さまざまな価値観や意見をぶつけ合って結論を見つけていかなければ」(三宅千智)

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