「新しい資本主義」なのに…新しくない事業続々 岸田政権の107兆円超予算案

2021年12月25日 06時00分
 政府は24日、一般会計総額を107兆5964億円とする2022年度予算案を閣議決定した。岸田文雄首相の経済政策「新しい資本主義」を実現するための予算と政府は説明するが、関連事業の大半は菅政権からの継続。看板とは裏腹に、地方のデジタル推進や人材育成事業など新しくない政策が並ぶ。(皆川剛、山田晃史、原田晋也)

◆菅政権、安倍政権を踏襲

 首相はこの予算を「成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現する予算だ」と説明する。成長戦略として、過去最大の1兆3788億円となる科学技術振興費を計上。中身を見ると、デジタル推進以外にも、次世代通信システム開発など菅政権の事業が踏襲され、単に事業費が増えたものが目立つ。
 政府は、有人宇宙飛行計画やロケット開発事業を看板政策の一つとして増額した。事業を担当する文部科学省幹部は「厳しい財政状況の中で、これまで要求しづらかったものを積み増していただいた」と既存事業だと認める。
 既存事業が多いのは分配戦略でも同様だ。厚生労働省は、デジタル人材育成や非正規労働者のキャリアアップ支援事業などを特別会計に計上した。首相が「人材投資を抜本的に強化する」としたことを踏まえ、同省は「新規事業だ」と説明するが、予算を査定した財務省の担当者は「既存事業だ」と反論。助成金の制度が微修正されただけだった。
 予算に先立って決定した22年度税制改正でも、首相が分配戦略の柱とした賃上げ税制を拡充したが、安倍政権の経済政策アベノミクスで導入された内容がほぼ継承されている。「成長と分配の好循環」につなげられるかは未知数だ。

◆スローガンどまりの「新しい資本主義」

 政府の2022年度当初予算案が新鮮味を欠く内容となった背景に、岸田文雄首相が就任前から掲げる「新しい資本主義」の具体像がはっきりしないことがある。そのため、いまだスローガンの域を出ていない。
 首相は成長と分配の好循環を具体化するため、経済の有識者らで構成される「新しい資本主義実現会議」を10月に発足させた。会議では具体策だけではなく、新しい資本主義の理念から決める。発案者の首相自身の考えが曖昧なためだ。
 20日に成立した21年度補正予算編成前の10月、この会議で政策の緊急提言をまとめたこともある。だが理念が定まらない中、22年度当初予算案と同様に、既存政策がずらりと名を連ねた。その上で首相は「豊かな中間層を生み出していくことが重要」と強調したが、中間層がどの階層を指すのかも定まらない。
 会議は来春、中長期のビジョンを取りまとめる方針だ。内閣府幹部は「政府の目的は新しい資本主義を定義することではなく、どういう政策をやっていくか」だといい、具体像が最後まで示されない可能性がある。

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