財務次官辞任迫った安倍氏、火に油注いだ論文 政治案件で補正予算膨張 予算編成の舞台裏

2021年12月25日 06時00分
 岸田政権初となる来年度の政府予算案は、2021年度補正予算と一体で編成された。事業の中身も安倍・菅政権の踏襲が目立ち、岸田色は見えない結果に。与野党の政策論争を「ばらまき」と警鐘を鳴らした財務次官の寄稿は、積極財政派を刺激する形となり、来夏の参院選を控え、従来の政権と同様に予算が膨張する可能性がある。(森本智之)

◆次官辞任迫った安倍氏

安倍晋三元首相

 衆院選を間近に控えた10月、財務省の矢野康治次官が月刊誌への寄稿で、予算編成を巡る与野党の動きを批判した。政府関係者によると、安倍晋三元首相は「矢野論文」を読み、財務省側に矢野氏の辞任を迫ったという。安倍氏は積極的な財政支出と金融緩和を組み合わせた経済政策「アベノミクス」を主導してきただけに「弓を引く主張と映ったのではないか」と関係者はみる。
 矢野氏への反発が広がる中、自民党は12月1日、「財政政策検討本部」を発足させた。積極的な財政支出を求める議員が名を連ね、安倍氏が最高顧問についた。関係者によると、その会合で矢野氏を追及しようという意見が議員から出たこともあった。

◆政治案件で膨張した補正予算

 自民党を中心に積極的な財政支出を求める声が勢いづく中、「16カ月予算」としてセットで編成されたのが、20日に成立した補正予算と、24日に閣議決定された来年度の当初予算案だ。
 特に補正は「あれだけ注ぎ込めば、後には何も残らない」(経済官庁幹部)というほど、与党の衆院選公約など政治案件を中心にあれもこれもと盛り込み、過去最大の35兆円に。規模ありきで中身が生煮えだったため、子どもへの10万円給付では混乱を招いた。
 科学技術の事業などで数千万円単位の大型基金をつくったり積み増したのも特徴だ。基金は積み立てた後は、国会の議決なしで複数年度に渡りお金を使える。菅政権時代にも無駄遣いへの懸念が指摘されたが、岸田文雄首相の唱える「予算の単年度主義の弊害是正」を名目に活用を進める。

◆参院選控え膨張圧力さらに

 一方の当初予算案は、「新しい資本主義」関連をはじめ前例踏襲が目立ち新味に欠ける。国会の議決なしで自由に使える予備費もコロナ前の約10倍で、21年度当初と同額の5兆円になった。
 当初と補正を合わせた年間の予算規模は100兆円前後で推移していたが、20年度には175兆円に膨らみ、使い切れずに30兆円を繰り越した。21年度も142兆円に達し、コロナ禍以降、たがが外れた状況に陥っている。
 財務省は幹部が根回しする形で、自民党に首相直轄の「財政健全化推進本部」を発足させた。だが、予算編成の過程では、首相は「経済あっての財政、順番を間違えてはならない」と繰り返した。いつ金額の大きさを優先する予算編成から、財政再建に目を配るのかは不透明だ。経済官庁幹部は「少なくとも来年の参院選に勝利するまでは無理だろう」と選挙目当ての大型補正を予想する。

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