少数民族地域に空爆繰り返すミャンマー国軍 住民巻き添え 民主派は「飛行禁止空域」設定を国連に要請
2021年12月25日 19時59分
【バンコク=岩崎健太朗】クーデター後の混乱が収束しないミャンマーで、国軍が空爆による抵抗勢力の制圧を強めている。23日以降、少数民族武装勢力や住民の武装組織との戦闘が続く東部カイン(カレン)州を戦闘機で攻撃し、多くの住民が避難を余儀なくされた。民主派側は「民間人を巻き込む無差別攻撃で、国際条約に反する」と非難、ミャンマー上空に「飛行禁止空域」を設定するよう国際社会に訴えている。
現地メディアによると、国軍は今月中旬、カイン州のタイ国境に近いレイケイコー村を襲撃し、潜伏していた国民民主連盟(NLD)議員らを拘束。これをきっかけに、一帯を支配するカレン民族同盟(KNU)や住民の抵抗組織と、国軍が衝突した。
国軍は50人以上の死者を出すなど劣勢となり、23日夜に戦闘機2機で村周辺を空爆。地上部隊も増派し、迫撃砲を撃ち込んだ。空爆は24、25日も続いた。一連の戦闘で10000人以上の住民が住居を追われ、避難キャンプ近くも標的となったという。カレン民族はキリスト教徒が多く、避難した住民は「クリスマス期間は戦闘はないと聞いていたのだが…」と現地メディアに語った。
国軍はこれまでも、少数民族地域で武装勢力の制圧に空軍を投入してきた。11月下旬以降は、北西部ザガインや中部マグウェ、北東部シャン州で、抵抗する民主派や民兵が潜伏するとみられる村を空から無差別に攻撃するケースが相次いでいる。
国軍に対抗する民主派の「挙国一致政府」(NUG)は「国軍の攻撃は村全体を破壊し、戦闘に加わっていない住民を含めて一掃することを意図している」と指摘。国軍の空爆を抑止するため、ミャンマー上空での軍用機の飛行を禁じる飛行禁止空域を設定するよう国連に要請している。ただ、ミャンマー情勢を巡っては国際社会に温度差があり、実効性のある対応は望めない情勢だ。
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