[森のクリーニングやさん] 三重県松阪市 長谷陽子(53)

2021年12月26日 07時27分

◆わたしの絵本

イラスト・まここっと

◆300文字小説 川又千秋監修
[カモシカの脚] 滋賀県近江八幡市・無職・65歳 清水宗彦

 滋賀県長浜市の横山岳に友人六人と登った。
 立ったまま休憩していた時である。「カモシカ!」と一人が叫んだ。
 一頭のカモシカが、動くことなく、親しげにじっと私たちを見ている。
 思いがけない天然記念物との遭遇に興奮を隠せない。私たちの方が緊張と感動で身動きができなかった。
 「カモシカのような脚」といえば、スラッと細く、綺麗(きれい)な脚を意味する。
 でも違った。
 昼飯の時、スマホで検索した一人が「シカと付くから鹿の仲間だと思われがちだが、ウシ科で、カモシカの脚はとてもたくましく、丈夫である」と教えてくれた。
 家に帰り「カモシカを見たよ」と妻に話すと、「私の脚と同じで、細くて綺麗だったでしょう?」。
 「う、うん…そっくりだったよ」

<評> 下界では美脚の代名詞。でも、澄み切った大気の中、日本の高山を駆け回っているのは、険しい急坂も苦にしないパワフルな脚力の持ち主。こんな出合いがあるから、山登りはやめられません。

[落ち葉舟] 名古屋市中村区・会社員・56歳 佐藤之信

 赤や黄色に輝く山々。その前を流れるエメラルドグリーンの川。私はその川に魅了され、車を止めた。
 そこには、山から降ってきた赤や黄色の落ち葉が、ひしめく舟のように浮かんでいた。
 それはまるで、平安時代の貴族たちが優雅に舟遊びを楽しんでいるかのようであった。
 「なんて美しい景色なんだろう」
 私は、改めて自然の美しさに感動した。それは、スマホやパソコン漬けの日々の中で忘れかけていた美しさだ。
 いつもならスマホでこの景色を撮るところなのだが、この壮大で美しい景色をそんなものに収めるのはもったいない。
 私はこの景色を私の脳裏に焼き付けることに決めた。
 これで、この景色は私が独り占めできるのだ。
 これ以上の贅沢(ぜいたく)はない。

<評> 感動がストレートに伝わってくる一編。この情景を画像で拡散共有するのはあまりにももったいない…自分一人のものにしたくなるのも無理からぬところです。今年を締めくくる、大自然の贈り物。


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