イチ推しは97条…人気の憲法条文クッキー、「みんなのお菓子屋さん」が焼きながら気づいたこと

2021年12月27日 06時43分

<ひと ゆめ みらい>カフェ「月と田んぼ」運営・トミヤマチハルさん(50)=板橋区

手作りの紫芋のタルト(左)と日本国憲法条文クッキーを手に持つトミヤマチハルさん=中野区で

 十二月中旬、中野区のシェアカフェ&アートギャラリー「ウナ・カメラ・リーベラ」に、近所の男の子と母親がやってきた。男の子が「どの数字にしようかな」と選んでいたのは、トミヤマさんが作ったクッキー。手のひらにのるほどの大きさの丸いクッキーの表面に「13」とか「25」とか数字が入っている。日本国憲法の第一三条とか二五条を示し、クッキーが入っている袋には、条文が書かれた紙も同封されている。
 「ウナ・カメラ・リーベラ」を借り、「みんなのお菓子屋さん 月と田んぼ」という名称で週二回ほど、カフェを運営している。食物アレルギーがあっても食べられるように乳製品や卵は使わない。食材は埼玉県の農家を手伝い、そこで作られたムラサキイモなど旬の作物を扱う。「大量生産による画一的な食材ではなく、その場所だから育まれた味や色合いを知ってもらいたい」。そうやって、大地と農家、菓子を手にする人をつなげてきた。
 長男と次男にアレルギーがあり、長男が生まれた十八年前から卵や乳製品を使わない菓子を作る。料理教室へ通い、菓子作りを研究。当時働いていたコーヒー店を定休日に借り受け、年四回の一日カフェを始めると、「スポンジケーキを初めて食べた」「ここなら友達と同じものを選べる」と反響が広がった。
 二〇一三年ごろ、憲法をテーマに講演会などを開いていた母親グループから、イベントで販売する条文クッキーを作らないかと提案された。「憲法は学校で習う程度しか知らなかった」と言うが、イベントに参加するうち、関心が深まり、条文の種類も増えた。
 クッキーは評判を呼び、作った枚数は「数え切れないほど」。中でもトミヤマさんが推すのは九七条。「基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」などと記されている。「当たり前だと思ってきた平和があるのは、人々が声を上げ、つかみ取ってきたからなのだと、クッキーを焼きながら気付きました」
 ウナ・カメラ・リーベラには今年九月から出店。十一、十二月は、子どもの権利に関する展示やトークのイベントを同店で催した。
 アレルギーがあり、食べたくても食べられない子どもたちの気持ちや、その声を聞くことの大切さ、私たちを守ってきた憲法…。暮らしの中で感じる疑問や矛盾に、肩肘張らず向き合い続ける。「気軽に食べられる菓子は気づき、考えるきっかけ。そうやって、つなげる役目を果たしたいんです」(中村真暁)
<みんなのお菓子屋さん 月と田んぼ> 原則毎週水、木曜の正午〜午後8時、ウナ・カメラ・リーベラ(中野区中野2の12の5 メゾンリラ101)で営業。名称は食と自然との関係の深さを表現しており、イベントなどで販売することも。憲法の条文クッキーは1枚300円(税抜き)。専用サイトからも購入できる。

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