<回顧2021>新型コロナで医療逼迫 渋沢栄一が大河で脚光

2021年12月27日 07時14分

◆新型コロナ 医療逼迫 安心実現へ重い課題

 十一月も半ば、寒気とともに三八度の高熱が出た。どきりとした。埼玉県のホームページから探した発熱外来を受診すると、「コロナの症状ではありませんよ」。ほっと胸をなで下ろした。
 新型コロナウイルス一色だったこの一年。同じような心配をした人が多かっただろう。感染「第三波」に伴う緊急事態宣言の発令で幕を開け、三月からワクチン接種がスタート。夏には第五波の猛威が襲った。

コロナ重症患者の治療に当たる医療スタッフたち=10月、久喜市の県済生会栗橋病院で

 八月に最大一万四千人を超えた自宅療養者の存在は、医療提供体制のもろさを際立たせた。病床逼迫(ひっぱく)ですぐには入院できず、保健所などの健康観察も滞った。事実上の「自宅放置」とも言える状況に陥り、在宅死を招いた。
 「急変が怖くて眠れない」「自分のせいで家族も隔離されてしまった」。当事者に話を聞くと、不安や罪悪感を口々に訴えた。ある女性は、症状が悪化した息子が入院までに一週間かかり「五輪どころではなかった」と漏らした。
 この間、現場の医師や看護師たちは必死だった。重症者の受け入れ要請が相次ぎ、一人が退院しても次の患者がすぐに入ってくる。「使命感だけでやっている」。言葉に疲労感がにじんでいた。
 県が十一月に公表した県民満足度調査では「医療の安心を提供する」施策について、三割が「不満」と答え、前年度より悪化した。第六波に備えた体制づくりが進むが、今度こそ安心は実現されるのか。重い課題は新たな年にも引き継がれる。(近藤統義)

◆渋沢栄一 大河で脚光 「原点の深谷」沸き立つ

 二〇二四年からの新一万円札の肖像に決まっている実業家・渋沢栄一。近代日本を築いた立役者の一人でありながら地味な存在だったが、渋沢が主人公のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の放映もあって話題の人に。出生地の深谷市では「原点は深谷にあり」をうたい、観光客を呼び込む好機到来と沸き立った。
 旧渋沢邸の「中の家(なかんち)」や「渋沢栄一記念館」など、市北部に集まる関連施設と中心市街地を結ぶ回遊バスが走り、「中の家」には晩年の渋沢を模したアンドロイドも登場。深谷ネギなど市の特産物や渋沢関連グッズを扱うショップが中心部に開店した。

渋沢栄一のアンドロイド(中)と、栄一を演じた吉沢亮さん(右)、渋沢喜作を演じた高良健吾さん(左)=深谷市の「中の家」で(同市提供)

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大で、ドラマ放映直前の一月に緊急事態宣言が発令された。ロケセットなどを展示する「大河ドラマ館」は入場制限せざるを得ず、五十万人を想定していた来館者は約十三万人にとどまる。また、市南部で県外からの観光客に渋沢ゆかりの地を訪ねないのか聞くと「え? どうやって行くんですか」と逆質問されることも。PRには工夫の余地がありそうだ。
 一方で、地元の人たちにとって渋沢は、ドラマが始まる以前から英雄。渋沢が大切にした「立志と忠恕(ちゅうじょ)」の教えは、三十年以上にわたって市内の小中学校で伝えられている。関連施設のボランティア男性は親しみを込めて「渋沢翁」と呼んでいた。郷土の偉人が“再発見”されたことを誇りに思う市民が多いことが、印象に残った。 (渡部穣)
◇ ◇ 
 新型コロナウイルス禍が続いた二〇二一年。年明け早々の緊急事態宣言発令に始まり、東京五輪、衆院選など、取材に奔走した各記者が今年のニュースを振り返る。

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