選挙互助 早期の決着 首相、参院選の影響回避 トランプ氏、農業票重視

2019年9月27日 02時00分
 【ニューヨーク=新開浩】安倍晋三首相とトランプ米大統領は二十五日、関税分野などに関する日米貿易交渉を、開始決定からわずか一年でスピード決着させた。両首脳は、交渉がそれぞれの国内選挙に与える影響を計算しながら、お互いに有利なタイミングで最終合意を取りまとめた。
 合意を巡る共同声明の署名式で、トランプ氏は「米国の農家と牧場にとって大きな勝利だ」と強調した。
 喜びは、来年に控える大統領選への危機感の裏返しだ。勝敗を左右する中西部の州を中心に、中国との貿易摩擦や米国抜きの環太平洋連携協定(TPP)発効で被害を受ける農家には、政権への不満がくすぶる。
 このため、トランプ氏は署名式の会場に、米農業団体の関係者を招き入れ「日本は、七十億ドルに相当する米農産品の輸出に市場を開く」と成果を誇った。
 合意に基づき、米国産コメの無関税枠は撤廃されるが、米国の日本向けコメ農家は民主党の牙城、西部カリフォルニア州に集中する。トランプ氏の選挙への影響は少ないとみられる。
 署名式でトランプ氏は、首相に対する「貸し」への言及も忘れなかった。七月の参院選を念頭に「首相はさほど遠くない過去に選挙で見事に勝利した。これはトランプとの友情ではないか」と指摘した。
 「友情」とは、貿易交渉の合意を参院選後に先送りし、選挙への影響を避けたことだ。トランプ氏は五月の日米首脳会談の直前、貿易交渉について「参院選までは、交渉の多くのことで取引を待つ」とツイッターに投稿した。
 一方、首相にとっても今回は絶好のタイミングだった。米国産農産物に対する関税撤廃・削減は、自民党が支持基盤とする国内農家に影響を与える可能性があり、参院選前の合意は避けたかった。その参院選が終わり、当面は大きな国政選挙の予定がない。衆院議員任期は二年以上残る。
 今回の合意は、TPPでは撤廃されるはずだった日本車に対する米国の関税が維持されるなど、日本がTPPより譲歩した部分がある。首相が衆院解散をしない限り、今回の合意の是非について有権者が判断する機会はしばらく訪れない。

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