個人情報を預けてクーポンGET? 新ビジネス「情報銀行」参入相次ぐ データは匿名化して企業に提供

2021年12月28日 06時00分
 住所や年収などの個人情報を積極的に預け、企業の販売促進などに活用させることで対価をもらう「情報銀行」という取り組みを金融機関などが始めている。これまでのインターネット上の利用者と企業の関係では、「勝手に個人情報を収集され知らない企業の広告を流される」という不満も強かった。銀行が仲介することで顔の見える関係づくりを狙う。(皆川剛)

◆アンケート回答で1万1000円

 「値段はいくらまで出せますか」「重視する要素は何ですか」「何時間まで待てますか」…。
 スマートフォンのアプリ上で、オーダーメードスーツの製作企業からの質問に選択式で答えていく。時間はわずか1分ほど。回答を終えると1万1000円分のクーポンが贈られた。
 三菱UFJ信託銀行が7月にサービスを始めた情報銀行「Dprime」だ。衣料品や化粧品、食品会社など11月末時点で約90社が加盟する。アプリの利用は無料だが、二重登録を防ぐため本人確認書類と自ら撮影した顔写真の登録が必須となる。
 約7000人が登録し、うち約半数は所有口座の出入金記録を明細まで含めて提供している。スマホの位置情報など、登録する個人情報が豊富になるほど、情報を求める企業とやりとりの機会が増える仕組みだ。
 間に入る銀行は、提供を受けた情報を匿名化して整理し、企業に提供して手数料を受け取る。企業側はたとえば「○○市在住の男性」「年収○○円以上」などと属性を絞り、利用者にスマホ上でアンケートを取ってマーケティングに生かせる。

◆個人情報の利用に「納得感」

 米IT企業などでは、一部で明確な同意なく個人情報を収集し、目的外利用するなど社会問題化した。情報銀行の利用者は、情報を提供しアンケートに応じるか否かを企業ごとに選べるため「納得感を持ってもらえ、企業の顔も見える。将来的には、自前ではマーケティングに力を割けない中小企業と消費者の交流の接点にもなれる」。三菱UFJ信託銀行の長島巌社長はそう自信を見せる。
 課題は登録者の拡大だ。Dprimeをダウンロードした人は約5万人に上る。登録を済ませた人は14%にすぎず、詳細な個人情報の提供には抵抗感がまだ強いようだ。自身も登録したという長島氏は「企業に精度の高いマーケティングツールとして使ってもらうには、100万人規模の登録が必要だ」と道のりの険しさを話す。
 情報銀行を巡っては、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資し事業展開したり、三井住友銀行が医療情報に特化したサービスを始めたりしている。「銀行」の名だが他業種も参入でき、電通グループや中部電力も取り組むなど競争が激しくなっている。

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