なぜ気候変動は「重大な危機」か…ノーベル賞の真鍋淑郎さんが懸念する社会の分断

2022年1月1日 06時00分

気候変動が世論を二分する政治問題になっている現状に懸念を示す真鍋淑郎さん

 ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎しゅくろうさんは本紙インタビューに、世界中で頻発する異常気象に強い危機感を示した。真鍋さんは自身の受賞について「これまで、こうした問題で(物理学賞を)もらった人はいなかった」と指摘。気候変動が地球の未来を脅かすまでになった現状が受賞の背景にあると警鐘を鳴らした。

◆「災害が次から次へと起きている」

 「このへんも大変だったんだよ」。真鍋さんは気候変動を語る中で、昨年9月に地元ニュージャージー州などで40人以上が犠牲になった豪雨被害に触れ、危機が身近に迫っていることを訴えた。西部で猛威をふるった山火事や南部で季節外れの冬場に起きた竜巻災害など、米国では異常気象が頻発した1年だった。
 世界も同様だ。真鍋さんは「今、災害が次から次へと起きている」と指摘する。ドイツやベルギーで昨年7月、200人以上が亡くなった大洪水では、研究者グループが温暖化で同様の洪水がこの地域で19世紀後半に比べ最大9倍も起きやすくなっていると報告。静岡県熱海市で昨年7月に発生した大雨による土石流被害も記憶に新しい。

◆欧米に押し寄せる移民、難民

気候変動が世論を二分する政治問題になっている現状に懸念を示す真鍋さん

 真鍋さんが気候変動を「人類のメジャー・クライシス(重大危機)」と呼ぶのは、災害による直接的な犠牲だけが理由ではない。温暖化や干ばつ、水位の変化などで従来の食料生産ができなくなった地域では大勢の難民が発生し、安全保障問題になっている。国連のグテレス事務総長は昨年、途上国を中心に「気象災害によって3000万人以上が土地を追われた」と訴えた。
 その主な目的地は欧米などの先進国だ。米国では近年、相次いで中米を襲った巨大ハリケーンなどで難民となった人々がメキシコ国境に押し寄せ、深刻な政治問題になっている。
 バイデン政権は昨年1月の発足時には移民に寛容な姿勢を示していたが、入国希望者の殺到に対処しきれず、政策は二転三転。政権支持率は低迷し、移民を犯罪者呼ばわりして米国の自由と民主主義を後退させたといわれるトランプ前大統領が、今も根強い人気を保つ一因となっている。

◆疑う人「いくらでもいる」から…

 真鍋さんは、気候変動の存在を疑う人は「いくらでもいる」とも語り、この問題へのスタンス自体が新型コロナウイルスのワクチン接種と同じく、世論を二分する政治問題になっている現状に懸念を示した。
 英国で昨年開かれた気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は気温上昇抑制の数値目標などで合意したが、気候変動問題への長期的な対処には市民レベルでの科学的な理解が不可欠だ。真鍋さんは「懐疑的な人たちをぼろくそに言うばかりではいけない。複雑なコンピューターを使った予測だけではなく、社会に伝わる分かりやすい説明が必要だ」と、若い研究者らに呼び掛けた。

ノーベル物理学賞のメダルを手にする真鍋さん

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