半世紀ぶり、砂漠に復活した湖が鳴らす警鐘「水がなくなる時は敦煌が終わる時だ」

2022年1月4日 06時00分

◆温暖化「水がめ」に危機 解け出す水量は倍に

 「世界の屋根」と呼ばれる中国西部のチベット高原の氷河が急速に解けている。周辺では氷河の融解による大規模な洪水が相次ぎ、専門家は将来的な干ばつの危険性を指摘する。
 チベット高原は黄河や長江に加え、メコン川やインダス川などアジアの主要河川の源流だ。南極、北極に続き地球上で3番目に多くの氷を貯蔵する「第3の極」と言われ、氷河は安定的に水を供給する「水がめ」の役割を果たしている。
 だが、地球温暖化により、氷河の減少が急速に進む。中国科学院によると、祁連山脈一帯の気温は半世紀前と比べて1・5度上昇し、氷河から解け出す水量は2倍に増加。氷河の面積は12.6%減り、近年減少ペースは加速している。

◆「氷河なくなれば、洪水、干ばつ多発」

 チベット高原全体でも氷河の面積は1〜2割減少。今世紀末には、氷河から河川に供給される水量は現在の4分の1の水準まで落ち込む恐れがあるという。
 同科学院の陳仁昇研究員は論文で「氷河がなくなれば、黄河、長江などチベット高原を源流とする河川の水量が大幅に変動し、洪水や干ばつが多発するようになる」と警鐘を鳴らす。

◆洪水、既に犠牲も…決壊の危険1200カ所

 氷河の融解による洪水被害は既に現実の脅威だ。
 チベット自治区西部のルトク県では2016年7月、氷河が融解してできた湖「氷河湖」が決壊。遊牧民9人が洪水で押し流されて死亡し、羊など数百頭の家畜が犠牲となった。
 21年2月には、チベット高原の南にそびえるヒマラヤ山脈山麓にあるインド北部ウッタラカンド州の氷河が解けて川に流れ込み、洪水が発生。下流の発電所が破壊され、作業員ら200人以上が命を落とした。
 中国科学院などが衛星画像などを分析した結果、チベット高原には約7000カ所の氷河湖があり、うち約1200カ所が決壊する危険性が高いという。

◆CO2排出削減策、強引な抑制で電力不足

 中国政府も氷河の減少には危機感を募らせる。洪水発生前に住民を避難させるため、決壊リスクが高い氷河湖に観測機器を設置し、監視体制を強化する。習近平国家主席も今年6月、青海省を訪れ、チベット高原の氷河の状況も視察した。
 ただ、氷河減少の根本的な原因は、気候変動による気温上昇だ。共産党一党支配の中国では、党や国家主導で温暖化を防ぐため二酸化炭素(CO2)の排出量削減にまい進するが、上意下達の急進的な政策運営には早くもひずみが出ている。
 一部の地方政府が、中央から求められたCO2排出量削減目標を達成するため、強引に石炭火力発電所の発電抑制に動いたところ、各地で電力不足が深刻化。生産停止に追いう込まれる工場が相次いだ。一部の工場では軽油を燃やす自家発電で操業を続け、かえって多くのCO2排出につながった。
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