「サンフランシスコの高速道路が水没する」48万人以上に悪影響…州政府が訴える海面上昇の脅威

2022年1月3日 06時00分
<連載「ワン・プラネット 深まる気候危機」>
 海岸沿いの危険な区域に住む住民に将来的な転居を促す政策「マネージド・リトリート(管理退去)」をめぐり、住民たちが対立する米西部カリフォルニア州。しかし、強まる風と波によって海岸の浸食が早まったり、道路が浸水するといった被害は増えており、住民たちの気候変動への危機感は同じだ。
 強まる風と波は、ペルー沖の太平洋で海水温が上昇する「エルニーニョ現象」に加え、気候変動で地球上の風の流れが変化したことが原因とされる。京都大防災研究所の森信人教授は「カリフォルニア州では平均的に風が強く、波も高くなってきている」と話す。

◆海面上昇、加速の恐れ

 さらに今後は温暖化で海面上昇が加速し、水没などの危険も増すといわれる。
 州政府は一昨年公表した報告書で、温暖化による海面上昇を、2030年に最大で30センチ、50年に60センチ、100年に2メートル超と予測している。
 米航空宇宙局(NASA)によると、1980年から2020年までの40年間では10センチにとどまっていただけに、海面上昇は加速する。州政府は「大潮やエルニーニョなどが加われば、さらに水位は上昇する」と警鐘を鳴らす。

◆資産への悪影響13兆円超か

 海面上昇で引き起こされる被害は甚大だ。
 報告書はさまざまな調査結果から「海面が約1メートル上昇した場合、サンフランシスコの主要な高速道路や鉄道、空港が水没する」と推定。2100年までに海面が約2メートル上昇し、暴風雨が頻発すれば「州内で暮らす48万人以上の住民と1190億ドル(約13兆5000億円)の資産に悪影響がある」との米地質調査所の試算結果も紹介した。
 大型の暴風雨が加われば、被害額は1500億ドル(約17兆1000億円)に膨らむ恐れがあるという。

◆有害物質流出の懸念も

 さらに、水没した給油所や工場、各種の研究施設から有害物質が流出する事態も懸念されている。有害物質は石油製品や農薬など68種類に上り、土壌や地下水汚染への「脅威は大きい」とした。
 州政府は「重大な脅威と悪影響を軽減するための対策を取らなければ、公共の安全と経済の混乱が増す」とし、「対策を遅らせる猶予はない」と訴える。(敬称略、米西部カリフォルニア州パシフィカで、吉田通夫)
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