処理水タンク「23年春に満杯」は苦しい主張? 後ずれの試算でも海洋放出へ突き進む東電

2021年12月30日 12時00分
 東京電力は福島第一原発でたまり続ける汚染水を浄化処理した水(処理水)について、保管タンクが「2023年春ごろ」に満杯になると主張する。この期限と政府が決めた海洋放出方針を盾に、漁業者など関係者の理解を得ぬまま準備を進めているが、東電の主張や姿勢に問題はないのかを検証した。(小川慎一、小野沢健太)

◆23年9月まで延びる可能性も

 処理水を保管するタンクは約1000基(総容量約137万トン)ある。23日時点で保管量は約128万トンと全体の94%が埋まり、確かに限界は近い。
 東電は1日150トンの汚染水が発生して浄化処理を続けた場合、23年春に満杯になるとする。だが自ら講じた汚染水対策により、この前提が揺らいでいる。
 本紙の試算では、21年の1日当たりの処理水の増加量は126トン。年間の保管量が減ったことで、この年末から処理水が1日150トンずつ増えたとしても、タンクが満杯になるのは6月ごろにまで延びる。
 21年の増加量を踏まえて、年末から1日130トンずつ増えたと想定すると、満杯になるのは23年9月上旬。1日140トンとしても、満杯は23年7月上旬と春よりは先になる。

◆タンク増設には消極的

 タンク満杯時期の根拠に疑問が生じているが、東電に計画を見直す動きはない。その証拠に、海洋放出の設備を23年4月に完成させる工程を公表した。
 原子力規制委員会の更田豊志委員長は、東電が予定よりも遅く放出設備の計画を申請したため、23年春の放出開始が遅れることを懸念。22日の記者会見では「ぎりぎりの状態なので、緊急避難的に1年程度を貯留できるスペースを設けておく必要は出てくるかもしれない」と、タンク増設に言及した。
 「1年程度」の量は21年の実績値でみると、4万5000トン。タンク35~45基に相当する。東電によると、6基を造るのに8カ月かかるといい、急場しのぎでは増設できない。
 ただ、東電は1~3号機の原子炉の溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに向けた施設の敷地が必要だとして、タンク増設に消極的。廃炉責任者の小野明氏は23日の記者会見で、「現時点で増設は検討していない」と突っぱねた。

◆破られた?約束

 東電は今年4月に政府が海洋放出方針を決定後、処理水を沖合1キロから放出する海底トンネルの建設に向けた準備を進めている。
 こうした姿勢に、福島県いわき市の内田広之市長は21日の記者会見で「地元の合意が得られていない中でプロセスが進むことは、地元市民の気持ちを逆なでする」と批判した。小名浜港など漁港を抱え、海洋放出による風評被害が死活問題になり得るからだ。
 内田氏が重視するのは、東電と政府が15年に福島県漁連と交わした「関係者の理解なしにいかなる処分もしない」という約束。これが破られる、破られたという懸念が地元に根強い。
 「われわれとしてはまず、政府の方針で2年ほど後の放出が示されている」
 東電の小野氏は理解を得るため説明を続けるとしながら、政府方針を最重視する姿勢を見せる。東電は4月以降、福島県内外600カ所で説明会を開いたが、小早川智明社長はまだ県漁連に足を運んでいない。

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