<未来は変わる ちばのSDGs>若者呼び込む発電都市 むつざわスマートウェルネスタウン 天然ガスを地産地消

2022年1月1日 07時36分

「エネルギー自給自足の先進モデルを発信する」と語る市原大嗣さん。道の駅むつざわの総合受付では天然ガスによる発電や使用量がモニターで確認できる=いずれも睦沢町森で

 千葉市から車で一時間ほどの、房総半島東部に位置する睦沢町。山あいにある町営住宅に、会社員の石田淳也さん(32)の家族は暮らす。真新しい二階建て一軒家の2LDKは、夫婦と昨年生まれた長女の三人で暮らすのに十分な広さだ。
 デザインが統一された町営住宅三十三棟が南向きに並ぶ。電線は地中化され「整然とすっきりした街並みが気に入っています」と石田さん。
 専用の発電設備でエネルギーを地産地消しながらにぎわう、持続可能な地区づくりを目指す「むつざわスマートウェルネスタウン」。約三万平方メートルの敷地には、特産品販売店や地元食材のレストラン、温浴施設を備え、年間五十万人が訪れる「道の駅むつざわ」が併設する。人口七千人足らずの小さな町が、二〇一九年九月にオープンさせた。

◆道の駅が併設

上空から捉えたタウンの全景。道の駅(中央)と町営住宅エリア(左奥)が一体となっている(むつざわスマートウェルネスタウン株式会社提供)

 「火力中心の日本の発電は転換期を迎える。小さなエリア内でエネルギーをクリーンに自給自足するモデルを発信する、先進的な取り組みです」。オープン時からタウン運営を担当する睦沢町企画財政課の市原大嗣さん(34)はこう語る。
 最大の特徴は、県内を中心に広がる南関東ガス田の天然ガスを利用して電気をクリーンに地産地消する仕組みだ。敷地内の発電施設に備えた八十キロワットのガスエンジン二基が稼働し、地元産ガスから電気を生み出す。一六年に町などが設立した地域電力会社「CHIBAむつざわエナジー」を通じ、タウン内の地下に張り巡らされた電線で道の駅や町営住宅に送電する。
 発電時の廃熱は、道の駅の温泉を加温するのに使用。屋上に設置した太陽光パネルでも発電するなど、タウン全体でエネルギーが効率的に利用される。

◆災害時に強み

 こうした仕組みは、オープンからわずか八日後、災害時に強みを発揮したことで注目された。房総半島を中心に甚大な被害をもたらした台風15号では、一帯が数日間にわたり停電。だが、ガスエンジンを素早く復旧したタウンは五時間後には発送電を再開した。
 夜になると「タウンだけが明るく光り周りを照らした」と、道の駅マネジャーの早坂淳一さん(57)は振り返る。スマートフォンの充電やシャワーを求め延べ数百人以上が集まった。
 町営住宅のうち三十棟は、県外を含む町外の若者や子育て世帯向けに居住者を募り抽選。家賃は五万〜六万円で二十年住み続ければ建物は無償譲渡される。電気料金は通常より最大年間一万円ほど安くなるという。茂原市で生まれ育った石田さんは「長女が迎える未来のことも考えると、環境に優しい住宅で暮らすことにも魅力がある」と話す。

整然と並ぶ町営住宅エリアの遊具で遊ぶ親子ら

 市原さんは「二酸化炭素(CO2)排出の削減だけでなく、環境保護意識の高い若い世代の移住定住にもつながっている」と語る。人口減少に悩む地域はいま、自治体関係者らの視察が相次いでいる。若い世代が集う未来のまちづくりが全国の注目を集めている。(加藤豊大)
     ◇
 近年、見たり聞いたりする機会が増えた「SDGs」(国連が掲げる持続可能な開発目標)という言葉。実は、身近なところで着実に取り組みが広がっている。理念実現に向けた県内の個人や企業、自治体の挑戦を紹介する。

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