<コロナを越えて>(上)くろほねマルシェ(桐生市) 農家と買い手、野菜で結ぶ

2022年1月1日 07時51分

新鮮な野菜を販売する岩崎さん(左)=いずれも群馬県桐生市で

 「目移りしちゃうね」。客が悩むと、群馬県の桐生市地域おこし協力隊員の岩崎大輔さん(32)は「夕べと今朝、農家を回って集めた野菜です。新鮮ですよ」と笑顔で薦める。市中心部のカフェ軒先で、毎週土曜日午前九時から開かれる「くろほねマルシェ」。売り場には、市内の中山間地にある黒保根町の農家が作ったホウレンソウやトマト、レタス、ネギ、大根などみずみずしい野菜が並ぶ。
 地域に定着し、常連客も多い。会場近くの安田隆さん(71)はマイタケに目をやり「他とは違って香りからひと味違うんだよ」と太鼓判を押す。マルシェは新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、前身の「ドライブスルー八百屋」として始まった。今月十五日に開催百回目を迎える。
 岩崎さんは熊本県生まれ。大学卒業後、福岡市の商社で営業職を担当し、起業に関心を持つようになった。二十五歳で退職してバイクで日本一周し、各地で地域おこし協力隊員の活躍ぶりを知る。二〇一九年十月に桐生市の協力隊員に着任。黒保根町に住み、移住や定住の支援事業に乗りだした。地域と関わり、農家とのつながりもできた。
 そうした中、コロナが拡大し、二〇年に緊急事態宣言が発令されるなど環境が変化。黒保根の農家が出荷先にしていた道の駅「くろほね・やまびこ」の直売所は休業し、野菜の行き場がなくなった。
 そこで、困る農家を支援しようと「ドライブスルー八百屋」を考案。カフェの駐車場で、車窓越しに黒保根の農家から集めた野菜を売り人気を集める。

野菜を手にする岩崎さん

 店頭に立つ岩崎さんを通じ、野菜を買った人の声が生産者にも届くように。農家の星野悦男さん(72)は「買ってくれた人からの『おいしかった』が励みになる」と喜ぶ。
 黒保根の野菜を仕入れる地元の飲食店も増え、生産者と消費者の距離も縮まった。岩崎さんは「ただ野菜を売っているのではなく、黒保根という地域を売り込んでいるつもりです」と思いを語る。
 次の構想もある。野菜を売りたい農家と買いたい飲食店を結ぶ「マッチングアプリ」の開発だ。「それぞれの地域に根付く協力隊員の価値あるネットワークも生かしたい」。新たな仕組みづくりを目指す。(池田知之)
 ◇   ◇ 
 今年もコロナの影響は避けられそうにない。群馬、栃木県の主要産業である農業をテーマに、コロナ禍を乗り越えようと取り組む人々の姿を伝える。

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