<アフターコロナのミライを描く>(2)起業家精神ととのう オレタチノサウナ株式会社

2022年1月3日 07時14分

「サウナジャンキー」を自称する篠田尚弥さん。コロナ禍が仲間だけで入るプライベートサウナの発想を生んだ=世田谷区で

 どうせ先の見えない時代。好きなことを仕事にすればいい。サウナが好きすぎてサウナの会社をつくった。
 ワンボックスカー後部の内側はヒノキ張り。石が乗ったストーブが置いてある。「煙突を取り付け、薪(まき)を燃やすだけでサウナになる」。篠田尚弥さん(31)=世田谷区=が考案した自走式のサウナカーだ。
 本業は、ミュージックビデオやライブ用の映像制作者。コロナ禍でライブがなくなり暇になった。業務の発注元から固定給があり、生活に困ることはなかったが、巣ごもりして、ゲームをして、ネットフリックス配信の動画を見て、食事をウーバーイーツで宅配してもらって−という生活が三カ月近くも続くとわれに返った。「俺は今、めっちゃクズだ」
 行くあてもなく自転車に乗って家を出た。一時間ほど走ると、たまたま温泉施設があった。「汗もかいたし。寄ってから帰ろう」。これがサウナに目覚めるきっかけとなった。
 サウナは人に誘われて行ったことはあったが「年配の人が我慢して入っている」というイメージだった。愛好家が言う、正しい作法を試してみた。体を熱し、水風呂で冷やし、外気を浴びて休憩というサイクルを繰り返す。「本当にいい」。夢中になって自宅にもサウナをつくった。
 「睡眠の質が上がり、代謝も良くなってやせた。スマホやインターネットから解放され脳のデトックスにもなる。酒とかでストレス解消するよりもずっといい」。効果を語り出すと止まらない。
 世間は、サウナの普及が始まった昭和の高度経済成長期、スーパー銭湯が登場した平成初期に続く「第三次サウナブーム」。飲食店やレジャー施設の店じまいが続くコロナ下でも新たなタイプのサウナが、相次ぎ開業している。一人で入れる個室サウナや人里離れた秘境サウナ、ビルの屋上サウナなどがある。
 自分でも考えた。友人とキャンプに行った時にひらめいた。「車をサウナにしてしまえば、海、山、川、キャンプ場、どこでも好きな場所で仲間だけでサウナに入れる」。大自然の中のプライベートサウナ。レンタカーにすれば面白いはずだ。
 昨年六月、「オレタチノサウナ株式会社」を立ち上げた。クラウドファンディングで集めた資金を使い、十一月に一台目を完成させた。
 貸し出し業務を請け負ったキャンピングカーのレンタル会社の役員は「キャンピングカーやトレーラーでけん引する移動式サウナはあったが、みんなが気軽に運転できるサウナカーは画期的」と評価する。
 篠田さんは、十八歳の時から起業願望はあったが、なかなか行動に移せなかった。「忙しいと物事をゆっくり考えることがない。コロナ禍が、自分の状況やできることを知ることに結びついた」と思っている。
 今年を勝負の年にしたい。自走式サウナカーを使った事業の本格展開に夢を膨らませる。「これから台数をどう増やし、サウナの良さをどう広めるか。自分は絶対、サウナの日本一のインフルエンサーになる」(宮本隆康)

川べりに自走式サウナカーを止めてくつろぐ(篠田さん提供)

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