<未来は変わる ちばのSDGs>木更津市で「おかそだち」サーモン 鋸南町でバナメイエビ 水産資源の枯渇防ぐ 陸上養殖、環境に優しく

2022年1月4日 07時33分
 そう遠くない将来、地球の人口は百億人に迫る可能性がある。水産資源の枯渇が懸念されるが、海で養殖の急拡大を支え続けるのには限界があり、病原菌や水温の変化を受けやすいのも難点だ。こうした中、養殖の場を陸上に移し、問題解決の糸口を見いだそうとしている水産ベンチャー企業が注目されている。

陸上養殖され、網で引き揚げられるサーモントラウト「おかそだち」=木更津市かずさ鎌足で

 江戸前ずしのネタをはぐくむ東京湾から約十五キロの木更津市かずさ鎌足の工業団地。「おかそだち」のブランド名がついたサーモントラウトの養殖を手がけているのは二〇一三年創業の「FRDジャパン」(本社・さいたま市)だ。

◆水道水を循環

 木更津に年産三十トンのプラントが稼働したのは一八年。十六基ある水槽では、元気にサーモンが泳ぎ回る。ふ化から九カ月間はさいたま市の本社ふ化場で、その後の九カ月間は大きさ約三キロになるまで木更津で育て、首都圏のスーパーや飲食店向けに出荷している。
 天然海水や地下水を使わず、水道水で養殖する独自の循環技術を採用。水替えの必要がほとんどなく水温も一定なので水温調整の電気代が安くなるメリットがある。一般的なろ過装置に加え、脱窒槽を導入することで、えさや糞(ふん)に由来する水の汚れを除去し、窒素に変えて空気中に排出する。

水槽で元気に泳ぎ回るサーモントラウト

 一度も冷凍せず、鮮度が高いまま店頭に並ぶ国産生サーモンに対し、消費者や取引業者の評価は高い。二二年に木更津で年産二千トンの商業プラントを着工。二五年以降、年産一万トンのプラント着工を目指す。その先にあるのは、中国やインドネシアなど日本を超える人口のアジア各国での事業展開だ。
 同社の事業開発・マーケティング担当の宮川千裕さんは「『おかそだち』を通じ、持続可能性とか、環境に優しい養殖手法の大切さを消費者に知ってほしい」と話す。
 国連人口基金によると、世界の人口は一一年に七十億人に達し、現在は約七十八億人。推計では五〇年には九十七億人に増加し、人口の約66%が都市部に住むと予想され、大量消費と食糧危機が懸念される。島国で食料自給率の低い日本に輸入品がなかなか入ってこない事態も想定される。

◆中国でノウハウ

農業用ハウスで養殖したバナメイエビを手にする「シーサイドコンサルティング」の平野彩さん=鋸南町下佐久間で

 過疎化の進む鋸南町から挑戦するのは「Seaside Consulting(シーサイドコンサルティング)」。中南米原産のバナメイエビを農業用ハウスで養殖する。
 創業は一七年。環境改善技術に携わり、陸上養殖が盛んな中国・青島の研究所で学んだノウハウを基に水質改善の循環技術を開発した。その後、国内約二十の自治体に相談し、協力的な鋸南町に進出。農地転用許可(一時転用)を受けて同町下佐久間のハウスに養殖槽を設け、近くの港から二百トンの海水を搬入した。なるべく化石燃料は使わず、ハウスの保温力を利用して飼育に最適な水温を保つなど環境に優しい養殖を心掛けている。

バナメイエビを養殖している農業用ハウスの全景

 昨年八月にタイから二十万匹の稚エビを輸入。成育状態は良好で十一月下旬から販売を開始した。輸入バナメイエビと差別化し、イタリア語で白を意味する「Bianca(ビアンカ)」と名づけた。
 日本人が口にするエビの大半はバナメイエビで、国産のクルマエビなどと異なり砂に潜る習性がないため水中で大量に飼育することが可能だという。赤潮や天候の影響を受ける沿岸養殖に比べ、陸上なら管理しやすいともいえ、日本の食料事情を支える「救世主」として期待がかかる。
 夫と共同で代表取締役を務める平野彩さんは「環境問題を改善したいと思って始めた事業が結果的に陸上養殖だった。ただのエビ屋じゃないといったら語弊がありますが、あくまでも社会課題の解決に取り組みたい」と強い信念をのぞかせる。(山田雄一郎)

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