ウナギの稚魚を人工的に量産へ 入手容易な新たな餌を開発

2022年1月4日 12時00分
 ウナギの完全養殖を研究している国立研究開発法人水産研究・教育機構(横浜市)は、ウナギの卵を人工ふ化させた仔魚しぎょ(レプトセファルス)に鶏卵の黄身を原料にした餌を与え、稚魚(シラスウナギ)に成長させることに成功した。関係者への取材で分かった。これまでの餌は資源保護が求められたサメの卵を使っていたが、入手しやすい新たな餌の開発で、人工的に稚魚を量産できる可能性が高まった。(岸友里)

 ウナギの完全養殖 人工的に産卵、ふ化させて成魚まで飼育し、その成魚が産んだ卵から次の世代の成魚を育てること。ウナギ稚魚の相次ぐ不漁から、日本では完全養殖の研究が始まり、1973年に北海道大が世界で初めて人工ふ化に成功した。2010年、水産総合研究センター(現・水産研究・教育機構)が世界初の完全養殖を達成した。マグロの完全養殖とは違い、商業化はまだされていない。

鶏卵が原料の餌で飼育されているウナギの仔魚・レプトセファルス。体長2、3センチで柳の葉のような形をしている=三重県南伊勢町の水産研究・教育機構水産技術研究所で(川戸賢一撮影)

 同機構は2021年9月、この餌の特許を取得した。現在のウナギ養殖は天然の稚魚に100%依存している。近年は不漁が相次いでおり、将来、人工的に稚魚を量産できる技術が確立されれば、養鰻ようまん業への追い風になり、今後の研究が注目される。
 天然の仔魚は、日本から3000キロ南のマリアナ海溝で生まれ、プランクトンの死骸などを食べて成長し、体長6センチの稚魚に変わる。
 02年、同機構は日本沿岸で漁獲されるアブラツノザメの卵を使った餌を、人工ふ化させた仔魚に与え、稚魚まで成長させることに成功した。しかし、アブラツノザメは野生生物の国際取引を規制するワシントン条約会議の議題に上がるなど、資源保護が求められ、餌の量産が難しくなり、餌の改良を進めていた。
 魚類の成長にはタンパク質を多く含む低脂質、低糖質の餌が不可欠。同機構水産技術研究所(三重県南伊勢町)の古板博文・飼餌料グループ長(53)は「スーパーでも売っているような手に入りやすい物」にこだわり、菓子作りの材料で入手しやすい乾燥卵黄に着目した。だが、サメ卵よりも脂質の割合が高く、タンパク質が低いことが問題だった。
 解決策として、脱脂粉乳や魚粉などに水を加え、ペースト状に仕上げた餌を仔魚に与えたところ、約1割がふ化から200日後まで生き残り、サメ卵が原料の餌と同等だった。さらに生き残った仔魚を生後300日以上飼育したところ、40%が稚魚まで成長した。
 今後の課題は飼育期間の短縮。天然の場合、平均120日間で仔魚から稚魚になるが、人工飼育では2、3倍かかる。このため、餌代や光熱費などで1匹当たりの飼育費用は現在、3000円に上り、天然稚魚1匹当たりの価格の数百円よりも割高となっている。古板さんは「課題の解決に向け、この餌をベースに改良を続けている」と話す。

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