<2022リスタートへ>(4)心豊かな場へ工夫重ね 障害者の就労支援施設

2022年1月5日 08時01分

「スタッフがいろんなアイデアを出し、工夫をしてくれる」と話す外川さん=いずれも毛呂山町川角で

 ホウレンソウに春菊、大根…。毛呂山町川角にある就労継続支援B型事業所「あやの郷扶和〜夢(さとふわーむ)」の畑では、さまざまな季節の野菜が栽培されている。昨年十二月中旬、マスクを着けた職員と利用者合わせて十人ほどがホウレンソウ一株一株を丁寧に抜き、根をはさみで手際良く切り取っていた。
 「アクが少なくて食べやすいと好評なんですよ」。事業所を運営するNPO法人「あやの郷福祉会」理事長の外川(とがわ)健治さん(69)は、青々とした実りを笑顔で紹介する。

ホウレンソウを収穫する事業所の利用者とスタッフ

 事業所には精神や知的障害がある十〜六十代の男女十五人が通い、工賃を受け取りながら就労訓練などをしている。のどかな雰囲気に包まれているが、二〇二〇年春からの新型コロナウイルス禍では運営の危機に陥った。
 コロナ禍前の一九年度、事業所では主に農作物の販売と町から請け負う清掃業務、各種イベントでの音響業務で年間約百五十万円の売り上げがあった。しかし、二〇年度はイベントが軒並み中止となり、売り上げ全体の約30%を占めていた音響業務がゼロに。収入の大きな柱を失った。
 畑や坂戸市役所での野菜販売も、不特定多数の人との接触を避けるため自粛した。事業所の職業指導員佐藤早耶佳(さやか)さん(32)は「みなさんの安全を考えて泣く泣く決めた」と振り返る。
 活動を完全に休止すると運営費に充てる町からの給付金がなくなり、事業所が立ちゆかなくなる。感染を防ぎつつ、仕事を続けられる方法をスタッフ九人で考え、時差出勤や在宅ワークに挑戦した。利用者の自宅で花やナスの苗のポットに水やりをしたり、小物などの材料となる古い着物をほどく作業をしてもらったり。出勤日を分け、さらに出勤時間と昼食時間を一時間ずらし、事業所が「密」にならないようにした。
 急な変化に戸惑う利用者もいた。在宅ワークを説明すると「なんで?」と聞かれ、作業中にマスクを外してしまう人も。丁寧な説明や声掛けを繰り返し、何とか軌道に乗せていった。
 新たな収入源の開拓にも乗り出した。一つが野菜の無人販売所だ。職員の知人を通じて町内と鶴ケ島市に計四カ所設け、売り上げは一日で合計四、五千円になることもある。コロナの流行初期には、当時品薄だったマスクをガーゼやコーヒーのペーパーフィルターで手作りして売ったりもした。
 工夫と対策、そして利用者たちの頑張りで、二〇年度は農作物の売り上げが音響業務の穴を埋めるほど伸び、全体の売り上げでも前年度と同規模を維持できた。また、丁寧な作業が評価され、本年度は町から請け負う清掃場所が一カ所から四カ所に増えた。全体の売り上げも好調で、この間、事業所から感染者は出ていない。
 昨秋以降、県内の感染状況は落ち着いているが、イベントは開催見送りが続き音響の仕事はゼロのままだ。事業所は仕事の内容や働き方の転換は簡単ではなく、佐藤さんは一般企業よりもコロナ禍の影響を受けやすいと感じている。苦境も社会に伝わりづらい。
 「事業所は仕事を通じて利用者が前向きに、心豊かになれる場」と佐藤さん。難しい状況は続くが、外川さんは「感染対策は気を緩めず、事業所の方針の『明るく、楽しく、自分らしく』でコロナも乗り越えていきたい」と話した。(寺本康弘)

関連キーワード


おすすめ情報

埼玉の新着

記事一覧