認知症の高齢者笑顔 地域社会で有償ボランティア活動 自信回復へ取り組み

2022年1月5日 08時39分

学童保育の子どもたちのおやつを作る久保さん(右端)と利用者ら=名古屋市で

 通所介護(デイサービス)を利用する認知症の高齢者らが、有償ボランティアとして地域の子育て支援などに協力する動きが出てきた。地域社会と関わる活動を通じて、生きがいや自信を取り戻してもらおうという新しいサービスだ。(佐橋大)
 「子どもたちは『おいしかった。また来てね』と言ってくれる。ありがたいよね」「作りがいがある」。三角巾にエプロン姿の高齢女性らが、キュウリを刻みながら顔をほころばせる。
 名古屋市昭和区の「デイサービスセンターやっとかめ」では十三年前から、社会参加の一環で、利用者らが市内の学童保育所に五十人分の手作りおやつを届けている。要支援2〜要介護3の希望者がレクリエーションの時間に有償ボランティアとして参加。一回四千円の売り上げは事業所内でため、利用者が昼食を作るとき、ちょっとぜいたくな食材を使うのに充てている。
 先月中旬には、六十〜九十代の利用者三人が職員三人と一緒に、クリスマスにちなんで鶏の唐揚げとポテトサラダを約四時間かけて調理。出来たてを学童保育所に持って行くと、笑顔の子どもたちにハイタッチで迎えられた。
 この活動は昨年八月まで週一回続けていたが、今は職員不足のため不定期で実施。認知症の症状で怒りっぽかった人も参加するうちに落ち着いてきたという。「認知症の人は不安が強く自信を失いがちなので、社会生活が余計にうまくいかない。他人からの評価や感謝、期待を感じて自信を取り戻していく」。同センターを営む久保裕児さん(46)は手応えを口にする。
 厚生労働省は二〇一八年、「職員が見守り、介助をする」など一定の条件を満たせば、介護サービスの中で利用者が有償ボランティアなどの社会参加活動もできるとする通知を全国の自治体に出した。しかし、認知症介護研究・研修大府センターが一九年、愛知県内の約六百事業所に聞いた調査では、半数以上がその通知を「知らない」と回答。実際に利用者が地域で有償ボランティアをしている事業所は二つだけで、子どもの見守りなど地域の無償ボランティアに参加する事業所も九つにとどまった。
 同センター主任研究主幹の斉藤千晶さんは「『介護はお世話をすること』という意識ではなく、認知症の人の希望に耳を傾け、その実現に向けて社会参加活動にも積極的に取り組んでほしい」と強調。地域との連携が必要な場合は、各市町村の「認知症地域支援推進員」などに協力を仰ぎながら進めるよう呼び掛ける。

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