シチリア島でマンゴー急拡大 「春も秋もない」気候の極端化、特産オレンジ大幅に減り

2022年1月7日 06時00分
<連載「ワン・プラネット 深まる気候危機」>
 頂上がうっすらと雪化粧した活火山エトナに見下ろされ、高さ3メートルほどの南国風の樹木がこんもり茂る。「マンゴーの木は賢いよ。土地に合わせて耐性をつけるから長持ちするんだ」

昨年12月、イタリア・シチリア島フィウメフレッドで、後背に広がるマンゴー畑を示すビンツェンツォ・トゥットベーネさん

 昨年12月中旬、地中海に浮かぶイタリアのシチリア島北東部フィウメフレッド。ビンツェンツォ・トゥットベーネ(61)はそう言って、今夏の収穫に向け手入れを始めた1000本の木の1本をいとおしそうに触った。

◆技術も指導、苗木の提供15万本以上

 1980年代末のオーストラリア旅行で、イタリアでは珍しかったマンゴーの味にほれ込んだ。産地オーストラリア西海岸の気候はシチリアに近く、「好機と思った」。建設会社の仕事をやめて現地農家で修業し、90年にイタリア初のマンゴー農家になった。今や年間40トンをイタリア全土や近隣国に出荷する。
 自ら生産するだけでなく、マンゴー栽培を希望する農家への技術指導にも熱心に取り組む。栽培農家は10年で急増し、これまでに15万本以上の苗木を提供した。「気候危機に商売を助けられたようなものだ」。そう苦笑いを浮かべる。

たわわに実ったマンゴー(ビンツェンツォ・トゥットベーネさん提供)

◆柑橘類は激減、損失1.8兆円か

 欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、シチリアでは過去50年の平均気温の上昇が2度を超す地域が続出。農業団体コルドレッティは声明で「南イタリアでは気候変動による高温化に対応するため、トロピカルフルーツ栽培のブームが起きている」と指摘する。
 マンゴーやアボカド、パパイア…。かつてイタリアで栽培されていなかった果樹の作付面積は、この10年で約1000ヘクタールと100倍以上に増えた。一方、シチリア特産の柑橘類の生産量はオレンジが15年間で31%減り、レモンは50%も減少。農業団体は、国内の農業が乾燥や洪水といった気候異変で受けた経済的な損失額が140億ユーロ(約1兆8000億円)に上ると試算する。

◆「いま動かなければ将来がない」

 トゥットベーネの支援で2020年からマンゴー生産を始めたマルチェロ・トリージ(52)も気候変動の深刻さを実感する1人だ。福島市と同じ北緯37.4度に位置するフィウメフレッドでは近年の7~8月、気温が40度を超えることがふつうになった。かつて35度を上回る猛暑日は1週間ほど。「春も秋もない。『二季』ともいえる極端な気候になってしまった」
 柑橘類は従来より2カ月早い3月に開花するようになり、寒の戻りによる霜害を受ける年が増加。生産量は安定しなくなり、マンゴーに活路を見いだした。「いま動かなければ将来がない。未知数の品種で不安はあるけど、気候が変動するなら、それに合わせて農業も変えるしかない」(敬称略、シチリア島北東部フィウメフレッドで、谷悠己)
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 地球規模の気候変動は、生態系や人々の生活を一変させ、民主主義をも脅かしています。本紙は今後も随時「ワン・プラネット」を掲載する予定です。

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