<ワールド経済ウオッチ>「ウイグル産」敬遠で綿価格が高騰…中央アジア・タジキスタンに「労働搾取」の跡

2022年1月7日 06時00分

タジキスタン南部キズィルカラに広がる綿花畑=小柳悠志撮影

 タオルや衣服の原料となる綿の価格が高騰している。中国新疆しんきょうウイグル自治区における綿花栽培の強制労働がクローズアップされ、アパレル業界で新疆綿を避ける動きが広がったことが主な要因だ。ウイグルに隣接し、同じく綿花栽培が盛んな旧ソ連・中央アジアで、搾取の構造を探った。(タジキスタンの首都ドゥシャンベで、小柳悠志)

◆旧ソ連時代は「奴隷制」ほうふつ

 旧ソ連の最貧国と呼ばれるタジキスタン。民族衣装の女性たちが綿花を摘んで袋に入れていく。綿の木の枝は硬く、畑に分け入ると腕に擦り傷ができるほど。
 「綿花は、機械よりも人が摘んだ方が余さず収穫できる。ただ直射日光を浴びるし作業は過酷だ」。取材した地元テレビ局の記者はこう説明する。
 中央アジアとウイグルは古くから綿花栽培が盛んだったが、旧ソ連と中国は全体主義体制下で生産拡大を推し進めた。その過程で多くの労働者が酷使された。
 かつての日本の田植えでも見られたように、綿花摘みは農村では義務。子どもたちはタダ働きさせられ、農薬や化学肥料による健康被害も問題となった。専修大の野部公一教授(経済史)によると、旧ソ連末期には綿花栽培を「現代の奴隷制」と批判する声も出ていたという。国連は10年ほど前から中央アジアの綿花生産を問題視するようになり、各国は児童労働の中止や賃金上昇の施策に乗り出した。

タジキスタンの首都ドゥシャンベの市場に並ぶ地元産綿のじゅうたん=小柳悠志撮影

◆ウイグルが非難の標的に

 中央アジアでは問題が沈静化したが、2021年は新たに中国の綿花産業が国際社会の非難の的になった。日米欧の先進7カ国(G7)は、新疆ウイグル自治区の綿花畑でウイグル族が強制労働に就かされているとの疑いを強め、昨夏には仏検察が新疆綿を製品に使った疑いで「ユニクロ」の捜査に着手したと報じられた。アパレル大手「H&M」などは新疆綿の使用をやめると表明している。
 中国は世界最大の綿花産地で、大部分はウイグル自治区で収穫される。アパレル業界が新疆綿の調達を避ければ、他の産地で需給が逼迫ひっぱくし、綿は値上がりする。綿花の国際先物相場は昨年9月末、10年ぶりの高値を付けた。

中国新疆ウイグル自治区カシュガルで昨年3月、紡績関連業者の店先に積まれた綿=中沢穣撮影

◆「今治タオル」にも影響

 余波は日本にも広がる。愛媛県の今治タオル工業組合によると、綿糸の価格はここ1年で1.7倍に跳ね上がり、タオル業者は製品を値上げせざるを得ないという。組合の広報担当者は「値上げで消費者の買い控えが進めば、各社の経営が厳しくなる」と懸念する。綿花をめぐる波紋は、22年も沈静化の動きが見えずにいる。

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