<新かぶき彩時記>曽我狂言「草摺引」 動く錦絵の舞踊劇

2022年1月7日 07時41分
 曽我兄弟の仇討(あだう)ちが題材の「曽我狂言」は正月の定番です。舞踊劇「草摺引(くさずりびき)」もそのひとつ。
 父の仇(かたき)・工藤祐経(すけつね)を討とうと血気にはやる曽我五郎を、兄弟の同情者・小林朝比奈が止めるというシンプルな内容です。草摺とは鎧(よろい)の下部、スカート状になった部分。五郎が家に伝わる鎧を持って駆け出そうとするのを、朝比奈が草摺を引いて止めます。
 この「〜引」という題名は、勇壮な荒事演出を示すもの。歌舞伎十八番「象引(ぞうひき)」や菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)「車引(くるまびき)」の場など、引くという演技は力の表現でもあります。
 古風な大らかさと祝祭性が本作の魅力。冒頭は「大薩摩(おおざつま)」という、勇壮な三味線の伴奏で盛り上げます。大道具は富士山の背景と梅の吊(つ)り枝。舞台正面またはセリ上がりで、両者が鎧を引き合う見得(みえ)で登場。まるで錦絵のような華やかさです。真剣に五郎を止めていた朝比奈が一転、手ぬぐいをかぶり「悪身(わりみ)」という、女性らしいそぶりで訴えるのもユーモラス。江戸の洒脱(しゃだつ)な感覚がうかがえます。近年は舞鶴という役名で、女形が演じる場合も多くあります。
 後半は肌脱ぎとなり、五郎は鎌(の絵)と輪(の絵)と「ぬ」からなる「かまわぬ」、朝比奈は鎌(の絵)と「ゐ(い)」と升の絵の「かまいます」の模様の襦袢(じゅばん)を見せることも。初演した七代目市川團十郎と市川男女蔵(おめぞう)家にちなんだ模様です。(イラストレーター・辻和子)

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